昨年末に発表された2021年のヒット予測上位に「コオロギフード」がランクインしました。最近、食用昆虫が注目されている理由の一つが栄養価の高さです。日本の郷土食であるイナゴは、中山間地域の貴重なタンパク源として食べられてきました。

 昆虫=高タンパクというイメージが定着していますが、実はタンパク質以外にもさまざまな栄養素が豊富に含まれています。例えば食用コオロギでは、ビタミン(B2・B12)、ミネラル(鉄分やカルシウム)、多価不飽和脂肪酸(オメガ3.6)、食物繊維なども豊富です。

 その理由として、丸ごと食べられるホールフードであることが挙げられます。牛、豚、鶏などの畜肉の可食割合が40~55%であることと比較すると、食用昆虫の無駄の少なさは特徴的です。

 「栄養価が高い食品は他にもあるのにわざわざ昆虫を食べなくても…」と思う方もいるでしょう。食用昆虫が注目されているもう一つの理由が、環境負荷の小ささです。

 食肉の生産にはさまざまな環境負荷が伴います。国連の報告書によれば、牛肉の場合、1キロの食肉を生産するのに約25キロの飼料と約22トンの水(飼料の栽培に必要な水を含む)が必要とされています。年々、食肉の需要は増しており、それに伴って飼料も増産されていますが、過度な農地開発は飼料生産国の森林破壊につながり、温室効果ガスの吸収量を減らす要因にもなっているのです。

 国連の推計によれば、世界全体の温室効果ガス排出量に占める畜産業の寄与は18%(CO2換算、ゲップによるメタン排出と牧草地開発によるCO2吸収量の減少を含む)に相当し、これは自動車の寄与を超えているそうです。

 一方、食用コオロギの場合、1キロの生産に必要な飼料は牛肉の約10分の1、水は約50分の1で済みます。飼料の節約は、栽培に要する農地の節約にもつながるため、持続可能性の観点からメリットの大きいタンパク源であるといえます。

 よく勘違いされるのですが、「タンパク源を全て昆虫に代替すべきだ」と主張しているのではありません。私はお肉を食べることも好きですし、そもそも特定の食品に大きく依存した構造は、食料安全保障の観点からも望ましくありません。エコでエシカルな食の選択肢の一つとして、昆虫由来の食品が抵抗感なく利用される未来をつくれれば、食と農業の持続可能性を高めることができるのではないかと考えているのです。

 人口減少が話題となる日本とは反対に、世界人口は増加の途上にあり、食料需要は増す一方です。栄養価が高く、環境に優しく、おいしく、そしてオシャレな食の選択肢を増やしていくことで、将来の食料リスクを少しでも低減できるのではないでしょうか。



フューチャーノート代表 桜井蓮 前橋市関根町

 【略歴】高崎経済大発ベンチャーで、昆虫食品を手掛けるフューチャーノート代表。起業は同大在学中で、現在は同大大学院在学。新潟県出身。佐渡高―同大卒。

2020/2/16掲載