若者の早期離職が社会問題になってから久しい。以前、七五三現象という言葉が話題になった。新卒の3年以内離職率が中卒で7割、高卒で5割、大卒で3割という現象を指している。今も状況はあまり変わらず、大卒3年以内の離職率は3割を超えている。

 最近の内閣府の調査では、初職の離職理由として、人間関係や労働条件、仕事が自分に合わないなどの回答割合が高い。キャリアアップにつながったり、就職先の企業から熱望されたポジティブな転職であれば、新しい環境での成功が期待される。

 しかし、現実には仕事上のストレスなどからの不本意な離職が多いのが実態である。ネガティブで後ろ向きの理由によって転職をしても、かえって労働環境が悪くなったり、新しい環境に適応するのに苦労したりして、やむをえずニートなどになってしまうと、悪循環である。

 仕事は自分自身の生活を支える手段で、給与の対価として労働を提供するものと捉えることもできるが、一方で人とのつながりを保つ貴重な機会でもある。自分の人生の目的を達成するために仕事は不可欠なものだ。さらに人の役に立って喜んでもらうことを自分の喜びに感じる経験をされている方も多いと思う。仕事を通じて自分の人生に好循環が生まれると、自分の人生に満足や希望が持てる。

 自分のキャリアが悪循環のわなにはまらないために、「時間軸」を意識し、長期的な視点から自分の人生を考えてみると良い。ここでいう「時間軸」とは、将来に目を向け時間をかけて解決を目指していく視点につながる。

 現在の職場において人間関係で悩んだり、やりたい仕事ができずストレスに感じて、解決策も見いだせないとしたら、短期的な視点でみると、絶望的に感じるかもしれない。しかし、長期的な視点から見た場合、意外なところから解決できるかもしれない。

 例えば、不満があっても長く働くことで後輩がたくさんでき、人間関係が好転するかもしれない。また、資格を取得するなど自己研さんに励むことで、多くのチャンスをつかむことができるかもしれない。現在の仕事上の不満という逆境が思いもかけない幸運をもたらすことになりうるのが人生である。

 キャリアなどのような自分の人生にとって非常に重要な事柄は、なかなか自分の思い通りにいかないことも多く、不満があったとしても短期的に解消することが難しい。その時に残念なことは、短期的な視点で希望を失い、努力していく気力を失ってしまうことである。「継続は力なり」ということわざがあるが、つらくても「時間軸」を意識して長期的な視点で、腰を据えて継続的に自分の課題に取り組んでいくことが、自分の人生を光り輝かせていくために重要である。



群馬医療福祉大大学院社会福祉学研究科教授 白石憲一 高崎市江木町

 【略歴】2017年から現職。専門は計量経済学。県の地域大学連携モデル事業で桐生市などと共同研究を行う。川崎市出身。慶応大大学院商学研究科単位取得退学。

2020/2/13掲載