2004年に子育て講座を開始した直後、「パパ対象の講座も開催してほしい」という声が母たちから上がりました。そこで10年から父親向けの子育て連続講座を前橋市、渋川市などで行っています。

 当初は参加者が少なく、「妻に勧められて参加」という方も。ここ数年はだいぶ様変わりし、学びとパパ仲間を求めて自分から積極的に申し込む父が増えました。「子どもが生まれる前に」という要望もあり、2年前にプレパパ・ママ講座も始めました。行政の担当者も子育て世代の男性職員が多く、意欲的に講座内容の提案をしてくださいます。「社会は変わってきている」というのが実感です。

 講座で耳にする父たちの悩みも、子育てを「主体」として行うものに変化してきました。「『参加』の立場で手伝うのではなく、自分なりに考えて子どもにとって良いことをしてあげたい」「分からないことは妻と調べて話し合う」―。明らかに10年前のスタート時とは異なっています。

 今の父たちが特に悩む問題が長時間労働と休暇の取りにくさです。「どうして職場は変わらないのでしょうか」とよく問われます。もっと子育てをしたいと思っても、職場はそれを認めず、管理職や周りが許さないというのです。

 「妻の期待にも応えたいし、2人で育児することで夫婦関係も良くしたい。子どもとの関係を大切につくりたい」と願っていても、なかなか思い通りにならないと聞きます。シングルで育児する父もいます。これらの問題を1人で抱え、悩みを共有する仲間がいなくてつらそうです。

 講座後は「パパ仲間ができて感謝」という声があります。「孤育て」は今では父たちの問題でもあるのです。「産後うつ」を発症する父が、母と同様に1割ほどいると研究で分かってきました。

 どうして職場は変わらないのでしょう。男性の育児を支援するNPO法人「ファザーリング・ジャパン」の方たちは「OSが古い」と言います。OSとはパソコン等を動かすシステムです。これを社会や人を動かすシステムに置き換えた表現でしょう。

 「男性は家事・育児・介護をせず、長時間労働は当たり前」という考えは、1950年代後半からの高度経済成長期のものでした。現状を考えれば「古いOS」と言えるでしょう。労働も家事・育児・介護も性別で分けない「最新版」に更新したいものです。

 職場の変化が求められるのと同じく重要なのは、行政や医療が連携して妊娠・出産・子育て期の家族を包括的に支える仕組みの構築です。男性の子育てを当然として、悩みや問題に対応して支援する。北欧諸国では当たり前の体制です。日本でも子育て世代包括支援センターで試みが始まっています。この動きに期待し、応援したいと思います。



共愛学園前橋国際大地域共生研究センター研究員 前田由美子 前橋市小屋原町

 【略歴】公立学校教師や専門学校講師を経て、2002年から現職。専門はジェンダー論、家族社会学。NPO法人ヒューマン政経フォーラム副理事長。千葉県出身。

2021/02/07掲載