みなさまはこけしの実がなる木をご存じだろうか。アジアの亜熱帯地域に自生する常緑低木で、雨期が終わると、おかっぱ頭で着物姿のこけしを実としてつける。…そんな木はない。こけしは職人が、一つ一つ作るほかないのだ。

 では、実際はどう作るのかを紹介させていただきたい。「すべての知識には可能性がある」とは、ダビンチの言葉である。つまりは、こけし製造の知識をつけておいたほうがいいとダビンチが言っているのだ。知っておいて損はあるまい。

 まず、運び込まれたミズキの丸太の乾燥を促すために樹皮をむいていく。

 刃物を使って1本ずつむき、それをひたすら積んでいく。1年分の材料が1度に入ってくるので、そりゃもう大変な仕事なのだ。雨ニモマケズを、呪文のように唱えながら、無表情で、むいていくのがこつである。

 積まれた丸太を雨が当たらない場所で1年から2年ほど自然乾燥する。

 乾燥が終わると、ようやく加工に入る。ヒビや節をよけながら、丸太を部品の長さで輪切りにし、それをケーキのようにカットする、そしてそのケーキをプレス機にセットして円柱状にしていくのだ。

 次は木工ろくろや木工旋盤での加工である。どちらも、木材を高速回転させ、刃物を当てて切削する機械だ。

 木工ろくろは手で刃物を持って削るので、自由度が高い機械である。しかし、扱いは難しく、なおかつ、使用刃物が売っていないので、自身で刃物を作る必要がある。

 木工旋盤はハンドルを回すと刃物が動くので、それほど難しくない。加工スピードも速いので量産に向いている。木工旋盤の注意点は、材料の中に虫が潜んでいることがあるということ。意識せず作業すると、液状に加工された虫が顔に飛び散り、黄色い悲鳴を上げることになる。

 こけしのパーツに形成された材料は、研磨、漂白を経て、絵付けに入る。群馬のこけしは、焼きごてで模様を付けたり、彫刻するなど、色を付けるだけではないことも特徴の一つだ。

 絵付けが終わると、塗装を数回繰り返して、パーツが完成する。群馬のこけしで多く見られるおかっぱ頭のこけしは、三つのパーツで作られている。同じ工程を経た三つが組み立てられて、やっと完成する。

 そうして作られたこけしの価格帯は2千、3千円が多い、みなさまはこの価格をどう感じるだろうか。こけし以外でも、「ものづくり」という言葉から頭に浮かぶ工芸品、木工品などは…。

 縁のなかった方も、そういうものを見かけた時は、少し興味を持って、価値を見いだしてみてはいかがだろうか。生活をちょっぴり豊かにしてくれるものが見つかるはずだ。



渋川市地域おこし協力隊員(創作こけし技術習得・継承) 大野雄哉 渋川市

 【略歴】専門学校を出てからエレキギターメーカーに勤務後、2019年9月から地域おこし協力隊員として活動。作品をインターネットで販売している。東京都出身。

2020/1/19掲載