改正児童福祉法が6月8日に成立しました。増加する児童虐待に対し、子どもを保護する取り組みや子育て家庭への支援策が強化されました。

 幼い命を脅かす虐待事件は後を絶たず、これまで児童虐待防止法とともに改正を重ねてきました。

 2019年1月、千葉県の女児が学校で「父親から暴力を受けている」と訴えたのに聞き入れられなかった事件を受け、当事者である子どもの権利擁護の取り組みや「子どもの意見表明権を保障する仕組み」が求められていました。

 今回の改正で、児童相談所が子どもの安全を確保するため一時保護したり、児童養護施設や里親に委託したりする際に子ども本人の意見を聴き勘案するよう義務付けられました。司法審査の導入も盛り込まれ、ここでも子どもの意見聴取が取り入れられます。

 意見表明権の保障をうたう「子どもの権利条約」が国連で採択されたのは1989年です。日本も94年に批准しました。日本では子どもにとって何が最善かを保護者や行政など大人が決める場面が多数を占めますが、子ども自身も自分にとってのベストを考え、年齢や個性に応じた形でその考えを伝えることができるということです。

 そこで、子どもの意見聴取の環境づくりや法整備を求める声が高まりましたがなかなか整わず、政府は何度も改善の勧告を受けてきました。今回の改正は、子どもの意見を聴き、尊重して対応を考えることが義務付けられた点で大きく前進したと言えます。

 しかし、虐待や貧困、いじめなど困難を抱えて心を閉ざした子もおり、誰もが自分の考えや意見を言える状況にはなっていません。このような現状を踏まえ、自分を出せない子どもたちに寄り添い、権利を守って最善の利益につながるよう支援する「子どもアドボカシー」の取り組みが全国で始まっています。

 アドボカシーは擁護や代弁の意味で使われます。そして子ども側に立ち、意見を聴くだけでなく、望むことを実現するにはどうすれば良いかを共に考え、行動してくれる人が「アドボケイト」です。

 既にアドボケイト養成講座を設け、児童養護施設の子どもへの聞き取りを行ったり、社会的擁護の枠を超えて全ての子どもを対象として学校に派遣したり、子どもが自分の意見を言う力を身に付けられるよう支援したりすることを目標に取り組んでいる地域もあるようです。

 生活するあらゆる場で気持ちや意見をくみ取り、代弁者となって周囲に働きかけてくれる人がいたら、子どもたちはどれだけ救われるでしょう。子どもが安心して声を上げられる場と信頼できる大人の存在が求められています。

 今回の改正を機に、子どもアドボカシー制度の整備やその担い手であるアドボケイトの養成が望まれます。

 【略歴】玉村町を中心に35年間、小中学校教員を務めた。2020年、同町を拠点に子ども支援団体「JOYクラブ」を設立。群馬子どもの権利委員会副代表。群馬大卒。

2022/7/2掲載