「ユニバーサルツーリズム」。全ての人が楽しめる旅行はこれから目指すべき観光地の在り方なのではないでしょうか。
群馬県は温泉資源が豊富で全国から多くの観光客が訪れます。でも車いすの私は次のように感じています。「坂や段差が多く楽しみの温泉も車いすだと入れないし、一緒に行った人に迷惑を掛けることになるから行かない…」。このように考える車いすユーザーも多いかと思います。
立地から見て温泉地に坂が多いのはやむを得ないかもしれませんが、宿や周辺の観光名所がユニバーサルデザイン化されていないと旅行を諦めてしまうのです。近年は昔に比べて急速にバリアフリー化されてきましたが、観光名所、交通、宿泊施設、食事をする店、トイレなど条件がある程度そろわないと車いすの方がいる家族や友人は旅行の候補地を考えるのに悩んでしまいます。
超高齢化社会を迎え、車いすやシルバーカーを利用する人も増えていきますし、子育て世代がベビーカーを利用して旅行に行く機会も増えるでしょう。多様な全ての人が使いやすい設備や環境になっていることが集客につながるポイントになるはずです。
車いすの利用者は全国で200万人以上と言われています。仮に車いすの当事者がいる家族が旅行に行きたいと考えた場合、車いすでも楽しめる観光地と宿ならば一家族(4~6人)まるごと来てくれることとなります。逆に車いすでは楽しめない場合、この200万人×家族人数分という大きな観光客を逃していることに着目すべきです。
家族がいつ車いす利用者になっても安心して旅行を楽しめる観光地に本県がなることで県内の魅力を世界に発信できるようになると考えます。坂道や階段を全てなくすのは難しいですが、例えば宿泊施設や飲食店、トイレなどは順次整備していくことで改善できます。すぐに環境整備の対応ができない場合でも、一人一人が多様な人に対応できる「心のバリアフリー」の意識を持つことで補える部分も多いのではないでしょうか。
共生社会をより推進し、車いすの人でもみんなと一緒に楽しむことができる旅行は最大の魅力になると思います。各地の街中再活性化でも多様性をベースとした街づくりをすることで新たな魅力が生まれてきます。世代を超えてさまざまな人がアイデアを出し合うこと、必ず「当事者」の意見を組み入れることが大切です。
ユニバーサル化やバリアフリー化を考える際にはその地域の当事者と連携し、一緒に考え、つくることで本県の魅力をもっと引き出せると考えます。「車いすの人も一緒に楽しめる観光地 群馬県♪」。そのようなPR方法もいいですよね。
DET群馬代表 飯島邦敏 伊勢崎市戸谷塚町
【略歴】2011年に希少難病の慢性炎症性脱髄性多発神経炎(CIDP)を発症。16年に車いす利用者でDET群馬を立ち上げ、18年から代表。伊勢崎商業高卒。
2021/01/14掲載