私は現在、「邦楽囃子(はやし)方」として活動しています。邦楽囃子方とは、歌舞伎や日本舞踊の伴奏音楽である「長唄」というジャンルの音楽を演奏する演奏家の中でも、小鼓や太鼓といった打楽器での演奏(囃子)を担当する人のことを言います。歌舞伎の舞台を想像していただいて、舞台の後ろに並んで演奏をしている人のことと言うと分かりやすいのではないかと思います。

 コロナウイルスの影響で、数々の舞台が中止になってしまいました。演奏家としては、舞台で演奏することが何よりも大きなモチベーションであり、その機会を失うのはとても苦しいものです。少しずつ回復してきましたが、まだまだ大変な状況には変わりはありません。しかし、この期間が必ずしも自分にとってマイナスであったかというとそんなこともありません。

 東京を拠点に演奏活動をしていましたが、コロナが落ち着くまでは地元に戻ることの方が賢明と考え、約8年ぶりに群馬県に帰ってきました。

 前々から、群馬に貢献したいという思いがあり、この機会に地元のさまざまな方と話をさせていただきました。興味を持ってくださる方も多く、囃子のワークショップ開催や演奏会の企画を勧められるなど地元の方々と深く関わることができています。

 こうした中で、自分が群馬県の文化の発展に貢献できる存在であるということを気付かされましたし、改めて群馬県の魅力や人間の温かさを感じることができました。また、今後の自分の活動の方向性や、新たな可能性を見つけることができました。

 どのような状況においても、それをプラスに変えられるかどうかは自分次第です。問題に対して自分にできることは何かを考え、行動に移していくことは、人生において非常に重要なことだと感じます。コロナによって起こした自分の行動によって改めてその重要性を実感しました。

 危機に瀕(ひん)した時、それを乗り越えるために必要なことは、自分に対する「自信」であると考えます。「自分にならできる! やってやる!」。そんなエネルギーは全て自信から生まれるものです。それが自分を奮い立たせる原動力になります。そのような自信は一朝一夕で身につくものではありません。日々直面する目の前の小さな物事を最後までやり切る経験を積み重ねることで、自分のことを自分が一番信じられるという気持ちが根付いていくのです。

 自分を信じるということはなかなかできることではありません。しかし、「自分にならできるんじゃないか?」という「希望」を自分自身に見いだすことはできるはずです。希望を持ち、思い切って行動に移すことで、たとえ失敗をしたとしても、そこで得た経験や教訓は必ず自信につながり、未来を切り開いていけるのではないでしょうか。



邦楽囃子方 藤舎英心(中島一樹) 高崎市上並榎町

 【略歴】2016年に藤舎(とうしゃ)流囃子方の藤舎呂英(ろえい)さんに弟子入り。19年からプロとして活動し、国立劇場などで演奏。高崎高―慶応大卒。東京芸術大別科修了。

2021/01/01掲載