子育て支援の講座を2004年に大学で始めてから、延べ約900人の親の皆さんと出会ってきました。親しい付き合いが続いています。連続講座という特徴から、受講者同士のつながりも育ち、支え合いの輪ができています。

 大学からスタートした「きょうあい子育てひろば」はその後、「しぶかわ子育てひろば」「えいめいきょうあい子育てひろば」と近隣に広がりました。託児付きで親がゆっくり交流できる講座なので「実は託児があるので申し込みました」という声をよく聞きます。こうした本音(本当は子どもと離れる時間が欲しい)が言える場にしようと頑張ってきました。

 こうした中で私が感じてきた問題に、親の重い負担と育児ストレスがあります。特に母親たちのストレスは心配です。子育て支援政策は少子社会にあって年々充実してきましたが、現場で本音に接していると事態が改善されていないと分かります。

 いわゆる育児不安といわれるものは、子どもの育ちの心配の他、「社会から取り残されている感じ」「自分の生き方がこれで良いのかと悩む、焦る」など、自分の生き方や社会とのつながり方の悩みであることが研究で分かっています。孤独感や疎外感といわれるもので、これが育児ストレスにつながっていきます。

 さらにもう一つ、関係しているものが「子育ては母親でなければならない」「3歳までは母親が家で子育てするべきだ」という考え方です。講座では、こうした考えについて「本当なのですか?」とよく質問されます。自分ではそうは思わないのだけれど、人に言われて困っていると。

 これについては、長らく各国で研究が行われてきました。そして分かったのは、家庭でのみ育つ子と保育所などの施設に預けられる子で発達や愛着等の差は見られないということです。また、発達の基礎として重要視される愛着の相手は、母親に限定されないこと、子どもは複数の相手を愛着の対象とすることも明らかになっています。

 人間は種の保存のために、幼いものや弱いものを愛らしいと思う性質を発達させてきました。大人がゆとりのある安心した状態にあれば、特に努力をしなくとも子どもの愛着は安定的に育ちます。しかし、親がさまざまな困難をかかえる環境(過重なストレスや支援を使えない環境等)にあると、それが阻害されます。大人が身を置く状態が一つの鍵になるのです。

 「ここに来ると気持ちが楽になるけれど、家に帰るとまたいつもの日常でついイライラしてしまう」と講座後に母たちは言います。それだけ日常が過酷なのでしょう。

 ストレスのない安心状態は個人でつくるには限界があります。「子育てを社会でやろう」。そうした状況を皆でつくりたいものです。



共愛学園前橋国際大地域共生研究センター研究員 前田由美子 前橋市小屋原町

 【略歴】公立学校教師や専門学校講師を経て、2002年から現職。専門はジェンダー論、家族社会学。NPO法人ヒューマン政経フォーラム副理事長。千葉県出身。

2020/12/16掲載