改修したスペースで職員とふれあう利用者ら=甘楽町白倉の特別養護老人ホーム「シルク」

 国内の人口減で働き手確保が課題とされる中、介護業界では利用者や職員の負担を減らしサービスの質を高めるため、施設改修やICT(情報通信技術)活用といった取り組みを進めている。甘楽町の特別養護老人ホームは、施設改修で居室から食堂までの移動距離を大幅に短縮。利用者の利便性を高め、労働環境を改善した。専門家は、サービスの質維持には多角的な対応が必要と指摘している。

 「施設内の移動は利用者にも職員にも大きな負担だった」。社会福祉法人かんら会(甘楽町)の森平恵喜理事長は、町内で運営する特別養護老人ホーム「シルク」を昨年改修した理由をこう説明する。

 改修前は利用者の居室から食堂まで、約100メートルある廊下の移動距離が長かった。中野裕文施設長は「60人いる利用者の約9割が車いすを使っているのに、少ない時は職員4人で移動させなければならなかった」と振り返る。

 改修のきっかけは、特養に入所できる人の基準が、2015年から原則として要介護3以上に変わったことだった。利用者や職員の負担を減らすため、約1億5千万円をかけて居室近くに食事やリハビリのスペースを設けた。すると移動距離は半分から3分の1程度に縮まった。

 森平理事長は、人手確保は特養を開所した1997年当時より難しくなっていると指摘。「結婚や出産で辞める職員もいる。労働環境の改善で、離職率も下がると考えた」と話す。

 サービスの質向上や将来的な人手不足を見据え、業務改善にロボットやICTを活用する事業所もある。

 特養などを運営する社会福祉法人善光会(東京都)は09年度から介護ロボットの導入をスタート。その後、本格的に職員の業務を分析する取り組みを始めた。19年度にはタブレット端末で介護記録を入力できる独自開発のシステムも取り入れた。利用者の状況をセンサーで感知できる機器などと併用すると、職員の負担を約3割減らせたという。

 独立行政法人福祉医療機構(東京都)の21年度の調査では、全国の特養の55.1%が職員が不足していると答えた。高齢者介護を研究する静岡県立大の高木剛教授は、特養は人手不足や利用者の要介護度の高まりなどで、サービスの質低下や利用者虐待といった課題を抱えていると指摘。質の維持には「外国人を含む人材確保や業務の整理・見直し、ロボットやICT活用といった対応が必要」とした。