横山ゆかりちゃんの失踪を報じる1996年7月10日付の上毛新聞

 

  群馬県太田市のパチンコ店で横山ゆかりちゃん=当時(4)=が行方不明になった事件の発生から26年。群馬県警は「一件でも多くの情報を得て、解決を図りたい」としている。事件の風化を防ぐため、発生当時の上毛新聞での報道を紹介する。

  大泉町寄木戸、電気工事業手伝い、横山保雄さん(29)の長女、ゆかりちゃん(4つ)=大泉町立西保育園児=が七日午後、両親とともに行った太田市高林東町のパチンコ店からいなくなり、両親から太田署に捜索願が出された。同署は同日「幼女失踪事案対策室」(室長・宮崎孝署長、百五十人)を設置し、県警捜査一課の応援を得て事件、事故の両面から捜査を開始、九日午後四時、公開捜査に踏み切り、ゆかりちゃんの発見に全力をあげている。同署は失跡時、パチンコ店内でゆかりちゃんが男性と話をしていたとの情報も入手、この男性の特定を急いでいる。

 調べによると、ゆかりちゃんは七日午前十時半ごろ、父親の保雄さん、母親(30)、妹(七カ月)とともに、車で太田市高林東町のパチンコ店「パーラー・パチトピア」へ行き、店内で遊んでいたが、午後一時四十分ごろ、母親が姿を見たのを最後に、行方が分からなくなった。母親は約十分後、ゆかりちゃんが店内にいないことに気づき、保雄さんと店内を探したが見つからず、同日午後二時過ぎ、太田署に届け出た。

 ゆかりちゃんは身長一メートル、体重二十キロ、髪は肩まで伸ばし、頭上をピンクのリボンで結んでいる。頻繁に瞬きする癖があり、人見知りする面もあるという。失跡当時の服装はピンクのワンピース、白色レースの半袖カーディガン、靴はピンク色でセーラームーンの絵入り。

 同署は、公開捜査に先だってゆかりちゃんの写真入りポスター約六万枚を作成、九日午前八時半からは、同店西約百五十メートルの八瀬川から南の利根川までの広範囲に機動隊員ら約八十人と車両十数台を投入、検索した。

 失跡した現場のパチンコ店から西方に約五キロ離れた尾島町では昭和六十二年九月十五日、同町亀岡の会社員、大沢忠吾さん(50)の二女、朋子ちゃん=当時(8つ)、尾島小二年=が一人で遊びに出たまま行方不明となり、翌六十三年十一月、利根川河川敷で白骨体となって見つかる事件があり、未解決となっている。

48時間以上見つからず公開踏み切る 太田署長

 九日午後四時から、太田署会議室で行われた記者会見で宮崎署長は「(事件に巻き込まれた場合の)身の安全を考え、捜査を行っていたが、四十八時間以上経っても見つからず、どこにも脅迫めいた連絡がないため、事故の可能性を含めて公開捜査に踏み切った」と説明。「女の子が店内で遊んでいるのを見た人は数人いるが、具体的な目撃情報はない」などとし、公開による情報収集への協力を呼びかけた。

家族連れ多い日曜日 パチンコ店

 ゆかりちゃんが行方不明になった七日、パチンコ店「パチトピア」の昼ごろの店内は、二百八十席のうち七割程度の客でにぎわっていた。

 店の出入り口は、西側に二カ所、南側に一カ所の計三カ所あり、駐車場は道路を挟んで店に隣接している。北側は国道354号に面し、出入りする車などで交通量は多い。

 同店の客によると「日曜日は家族連れが多く、小さな子供の姿も目立つ。店内にある飲食関係の自販機コーナーで、パチンコが終わるまで家族を待つ子供がいる」と話している。

 「パチトピア」周辺は、パチンコに興じる家族を待つ子供が道路や公園などで遊ぶ姿が目立つという。特に土、日曜が多く、十人近い子供を見かけることもあるという。

 近くに住む無職の男性(75)は「七日の午後、三、四人の子供が道路で遊んでいた。性別は分からないが、小学生より小さかったと思う。大人の姿は見当たらなかった」と話す。
周辺住民の話では、パチンコ店に隣接する材木店で、積み上げた材木に乗って遊ぶ子供や、南に約百メートル離れた向野中央公園で見かけぬ子供たちが、暗くなっても遊んでいるらしい。

 また、パチンコ店から南に約一・五キロの利根川周辺では「トラックを止めた四十歳くらいの不審者が今年になってから現れるようになった」と主婦らの間でうわさされている。

「なんとしても無事に」 帰り待つ父親

 「もし、だれかと一緒なら、どんなことでもしますから無事に返して下さい。また、何か知っている人がいれば、どうか連絡を」。自宅でゆかりちゃんの帰りを待ちわびる保雄さんは、沈痛な面持ちで訴えている。十一日はゆかりちゃんの誕生日。保雄さんは「とびきり大きいオモチャを」と計画していたという。

 保雄さんはこれまでも、たまに、ゆかりちゃんとパチンコ店に行ったことがあったが、その際も店外に出ることはなく、七日も姿が見えなくなる直前まで、保雄さんの近くで遊んでいたという。

 保雄さんは妻に「ゆかりがいない」と知らされた際も「必ず近くにいる」と信じ、妻に動かないよう指示してからトイレや駐車場の車の影などを探し回った。パチンコ店近くの飲食店などにも、小さい子供を見なかったか聞いて回ったが手掛かりがつかめなかった。

「お姉さんタイプ、しっかりした子」 保育園関係者

 ゆかりちゃんが通う大泉町立西保育園の吉田教園長の話では、ゆかりちゃんは一歳の時から同保育園に通園しており、現在年中組。「年下の子らと遊ぶことも嫌がらないお姉さんタイプのしっかりとした子」だという。

 担任の保母も「初めての人には警戒心を持ち、知らない人には絶対についていかない。暗い所も嫌いなゆかりちゃんが、一人で危ないような場所に行くはずがない」と話す。

 他の園児や父母らに影響が出ないようこの二日間は職員だけに経過や概要を話し、努めて平静を装ったというが、利根川周辺などで捜索が始まったと聞き、「一刻も早く無事な顔を見せてほしい」と不安そう。十一日はゆかりちゃんの五歳の誕生日。「ぜひみんなでお祝いしたい」とゆかりちゃんの元気な笑顔を待っている。

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