間もなく夏休みです。大学生も長い休みに入るため、「休みの間、大学生は何をやっているのか」と聞かれることがあります。そのときは、「インターンシップに参加する学生もいます」と答えます。インターンシップとは学生が企業や行政などで行う就業体験制度のことです。

 私は建設業を専門にしているため、研究室の学生の多くはインターンシップ先として建設業を選びます。就業体験に行く前に、私は学生に「建設業は他の業種に比べて労災事故に遭う可能性が高く、人命に直結した仕事だ。安易な行動はその地域全体に迷惑をかけるかもしれない。緊張感を持って臨むように」と言います。

 私が大学生だった30年近く前は、インターンシップ自体が珍しく、参加するのはごく一部の「意識の高い」学生でした。

 当時(1994年)の労働災害の死亡者数は2301人でした。そして現在(2021年)の労働災害の死亡者数は867人です。大幅に減少していることが分かります。

 積極的なインターンシップ参加が労災減少の要因であるかは不明ですが、就業体験がきっかけで、確実に労災防止への意識は高まると考えられます。

 しかし残念なことに、21年の労働災害の死亡者数を業種別にみると、建設業は288人と最も多く、2番目に多い製造業(137人)の2倍以上となっています。建設業のインターンシップでは労災理解を深めるさらなる取り組みが必要です。

 建設業に限らず、地域社会の構成員が労災を起こせば地域の発展に影響が出ます。地域を安全で豊かなものにするためには労災防止の普及活動が重要です。

 厚生労働省は5月30日、昨年の労働災害発生状況の分析結果を公表しました。労働災害による休業4日以上の死傷者数は14万9918人で、死亡者数の172倍です。知らないだけで身近な方が被災しているかもしれません。

 死傷者数を年齢別に見てみると、年齢が上がるにつれて増加し、特に60歳以上が全体の約4分の1を占めています。年齢が上がることによって労災事故が増えるのであれば、年齢に合わせた対策を考えていくことが労災防止の近道です。

 日本は少子高齢化社会を迎え、過去に経験のない自然災害が増加し、地域の姿は大きく変わりました。そして、地域には多様性が生まれ、共生社会が形成されています。

 地域の安全性の向上は、地域の皆さんと行政や企業、団体など多くの協働なしでは実現できません。

 前回(5月14日掲載)の視点を読んだ方から、「季節性の労災は知らなかったので労災発生に気を付けたい」との感想をいただきました。労災防止に貢献でき、うれしく思います。

 【略歴】専門は力学など。労災予防や構造物の維持管理などを研究し、日本クレーン協会群馬支部で講師を務める。東京都出身。東京都立大大学院修士課程修了。

2022/7/5掲載