7月31日、僕がアシスタント指揮者を務めるハンガリー・ソルノク市立交響楽団の、コロナによる活動休止後初めてのコンサートが開催された。演奏家にとって、また聴衆にとっても特別となるこのコンサートの指揮を、オーケストラは僕に託してくれた。

 ハンガリーでも、コンサートやイベントの再開が実現するまで、慎重な議論と対策が行われた。幸運なことにコロナ以前とほぼ同じ形態でコンサートを再開できた。ハンガリーの真夏は夜9時を過ぎても日が沈まない。湖の辺りに造られる野外特設ステージで、毎夏恒例の音楽祭オープニング・コンサートが僕たちの再開ステージとなった。

 前半は、世界のオペラハウスで活躍するオペラ歌手のエリカ・ミクローシャ氏などを迎えてのガラ、後半はシュトラウス一家のワルツやポルカなど、さながらウィーン・フィルハーモニー管弦楽団のニューイヤー・コンサートのような楽しいプログラムとなった。コンサートは驚くほどの熱気と興奮に包まれ、再開の喜びを皆で味わった。

 現状、世界のクラシック音楽界において、特にオーケストラやオペラ等のコンサートは規模が大きい分、各国の対応が分かれている。アメリカは早々に今年中のコンサートを中止すると発表した。ヨーロッパはほとんどの国が8月から様子を見つつ再開、しかし状況によっては再び中止も考えられるとしている。

 日本は、聴衆の入場制限や舞台でのオーケストラの配置制限をする。各奏者ごとにいつもの2、3倍の距離を取り、アクリル板などで奏者間を仕切るという対策を取っての再開となっている。

 オーケストラの奏者や指揮者にとって、奏者間で距離を取るということが演奏をする上で実は問題となってくる。通常60人、多い時には100人を超えるオーケストラは、テンポ、音程、音色、そして極めて繊細な音楽表現をそろえるために、常に周囲の音を聴き、感じ合いながら演奏をしている。

 一見、楽譜や指揮者のみに注意を向けているように見えるが、耳を澄まし合い、またアイコンタクトなどで、奏者間同士、多くのコミュニケーションを取っている。楽譜に書いてあること以上の表現を行うためには、この繊細なやりとりが必要不可欠なのだ。

 この形態に慣れるには、少し時間が必要かもしれない。そして議論も続くだろう。音楽家たちは変化に対応しつつ、すぐに答えの出ない問題と向き合っている。もし身近でコンサートなどがあり、気持ちが動くならぜひ会場に足を運んでいただきたい。クラシック音楽の伝統の灯を消すまいと、情熱を持っての演奏から、きっと何かを感じることができるだろう。

 もちろん、本来の姿と形態がいち早く戻ることを願うことは言うまでもないが…。



ハンガリー・ソルノク市立交響楽団 アシスタント・コンダクター 金井俊文 ハンガリー・ブダペスト

 【略歴】2016年にアラム・ハチャトゥリアン国際指揮者コンクール特別賞、19年に上毛芸術文化賞受賞。大泉町出身。ハンガリー国立リスト音楽院大学院指揮科卒。

2020/9/4掲載