▼生物が進化した古生代はカンブリア紀からペルム紀まで六つに区分される。シルル紀はおよそ4億4600万年前から4億1600万年前。生物の本格的な陸上進出が始まった

 ▼〈シルレア紀の地層は杳(とほ)きそのかみを海の蠍(さそり)の我も棲みけむ〉明石海人。シルル紀はシルリア紀、シルレア紀とも表記した。海の蠍とは生態系の頂点に君臨したウミサソリのこと。作者は太古の海を自在に動き回る生き物に思いをはせたのだろう

 ▼1931年制定の癩(らい)予防法によって、患者は隔離療養を余儀なくされた。心の叫びをつづった文芸はハンセン病文学と呼ばれ、その双璧が短歌の明石海人(岡山県瀬戸内市・長島愛生園)と俳句の村越化石(草津町・栗生楽泉園)である

 ▼海人は静岡師範学校を卒業して小学校教員になった。絵画や音楽を愛し、結婚して2女に恵まれた。だが25歳で発症して人生は暗転。教職を辞し、できうる限りの治療を求めたが、当時有効な治療薬はなかった

 ▼病状は進み、ついには失明。〈深海に生きる魚族のやうに、自らが燃えなければ何処にも光はない〉。口述で短歌を詠み、亡くなる4カ月前に歌集『白描』を刊行した

 ▼前書きで〈癩は天刑〉すなわち天罰であると記したが、〈明を失つては内にひらく青山白雲をも見た。癩はまた天啓でもあつた〉と結んだ。苦悩の果て、病との闘いの中に一筋の光を見いだしたのかもしれない。