以前、質の高い散歩と低い散歩があると書いたが、今回と次回は質の高い散歩に必要な点をいくつか書く。

 安定した、健康な若い犬だと1日に2回以上、1回が45分~1時間をベースとし、そこから年齢、体調、体格、犬種、そして性格に適した個々の散歩量を見つけよう。子犬はまだ体と脳が成長中なので1回の時間は短くしなければいけない。長すぎる散歩はまだ出来上がっていない骨や関節などに過度な負担をかけすぎ、後に故障が起きやすい。重量大型犬は特に要注意だ。

 さらに脳に処理しきれないほどの刺激を与えてしまうと落ち着きのない、時には攻撃性のある犬に育ってしまう。ちょっと短いかなと思うぐらいがベスト。目安は1日2~3回、1回を生後1カ月ごとに5分。例えば生後3カ月だと1回が15分、それを2~3回で、1日計30~45分。

 充実した散歩に必須なのはまず匂いを嗅ぐこと。人間が新聞を読み、さまざまなニュースや情報を得るのと同様だ。これでもかというぐらい匂いを嗅ぐ犬もいるが、それは「読書家」。嗅ぎ終わるまで待ってあげよう。われわれも興味深い記事を読んでいる途中で新聞を取り上げられたら気分が悪い。

 さらに近年、「匂いを嗅ぐ」ことと心拍数の関連性が分かってきた。ほかの犬に合えたうれしさで興奮したり、車の音に驚いたりで心拍数は跳ね上がるが、その後に匂いを嗅ぐことで正常に戻る。犬の健康を保つのに匂い嗅ぎは大事な役割を果たしている。

 草を食べる犬も多い。これも実は心拍数を下げる効果がある。除草剤がまかれている草は絶対に避けなければいけないが、安全な草で、適量なら食べさせてもよい。

 犬中心に動こう。速足、のんびり歩き、立ち止まる。犬にもその日、その時の気分があるので犬のペースに合わせよう。行く方向や場所を全て任せるのは安全上不可能だが、例えば危険な場所に行こうとしていない限りはなるべく犬に決めさせてあげよう。

 常に犬が行きたい方向に行ったり、前を歩かせると犬が自分をリーダーだと思い込み、飼い主の言うことを聞かなくなるのではと心配する声をよく聞く。そのためなのか犬を散歩中ずっと自分の横で歩かせている飼い主もいるが、それは散歩ではなく訓練だ。

 断言するが、飼い主の言うことを聞かないとすれば原因は自由散歩ではなく別にある。それどころか満足のいく散歩をしている犬は精神的に安定し、不満も少なく、飼い主のいうことを聞きやすくなる。大きな道路に出ようとしている時に「そこは危ないからこっちに行こう」と落ち着いた声で話しかけるだけで、引っ張る必要もなく、聞き入れてくれる。自由だからこそ一緒に歩くことを選択してくれる。



ドッグトレーナー 西尾サビーネ 嬬恋村

 【略歴】嬬恋村でドッグラン「サビーネズドッグバケーション」を経営。ドイツの訓練学校を卒業後、現地で活動。2016年、同村に移住。ドイツ出身。

2020/07/24掲載