渋川広域消防本部の2019年における救急出動件数は5621件(1日あたり15.4件、約1.5時間に1件)となっています。現場到着平均時間は10.0分、通報から医療機関へ傷病者を収容するまでの平均時間は41.2分でともに過去最長を記録しました。

 10年前と比較すると、救急出動件数は増加の一途をたどり、現場到着時間および通報から医療機関到着までの時間は延伸しています。さらに、この10年間で救急救命士を取り巻く環境も大きく変化しました。

 09年1月、救急医療体制の充実強化のため群馬県ドクターヘリが運航を開始しました。搬送先医療機関の分散化などを目的とした救急搬送システムが始まったのが12年12月です。これにより、県内の全救急車にタブレット、各消防本部と医療機関にノート型パソコンが配布されました。

 14年には救急救命士法が改正になり、心肺機能停止前の重度傷病者に対する静脈路確保および輸液、血糖測定並びに低血糖発作症例へのブドウ糖溶液の投与が実施できるようになり、救急救命士の処置範囲が拡大しました。

 救急救命士法の施行から20年以上経過し、指導救命士の運用が始まりました。経験豊富な救急救命士が指導救命士として、病院内と異なった環境で行う救急の現場活動に関する教育を担います。救急業務の質の向上に加え、消防本部や医療機関の教育負担軽減につながるとされています。

 年々増加する救急出動件数、救急救命士の処置範囲拡大、通報から医療機関収容までの時間短縮化を図るための取り組み等、当消防本部では目まぐるしく変化する状況に対し、さまざまな取り組みを行ってきました。

 県配布のタブレットについては、独自の利活用を行い、医療機関到着までの時間短縮を図っています。救急救命士の処置範囲が拡大し、救急救命士の病態把握、処置の必要性の判断、処置のスキル向上が必須となることから、指導救命士が救急救命士に対し、考える力、判断する能力向上を目的としたシミュレーションを実施しております。

 さらに、救急出動件数の増加は、現場到着時間が延伸することによる救命率の低下につながると懸念されます。充実した救急活動を行うためには、適正な救急出動件数の管理も必要不可欠となることから、消防本部警防課内に、平日の昼間救急出動できる救急係を新設いたしました。

 「新しき計画の成就は、ただ不屈不撓(ふとう)の一心にあり。さればひたむきにただ想(おも)え。気高く強く一筋に」(中村天風著書より)

 増加する救急需要に対し、さまざまな現場に対応するための人材育成はもちろんのこと、時代の変化に柔軟に対応することが、消防サービスの提供につながると思います。



渋川広域消防本部消防長 福田浩明 渋川市石原

 【略歴】1981年、渋川広域消防本部へ入職。同本部の救助隊長や総務課長など多岐にわたる業務を経験し、2018年4月から現職。前橋商業高卒。

2020/06/25掲載