新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐため、全国で「ステイホーム」が叫ばれていた5月の大型連休前後、栽培するキャッサバの苗を邑楽町にある畑に植えた。昨年は台風の襲来で収穫量が見込みの半分ほどだったので、「今年こそ」という思いはひときわ強い。

 元々、キャッサバは収穫直前にわくダニにさえ気を付ければ周囲に生える雑草を取り除く程度で、さほど手はかからない。農業をされている人なら皆、思いは同じだろうが、台風や長雨といった天候不順は自分の力ではどうにもならず、秋の収穫まで「何事もなく無事に育ってくれ」と祈る日々が続く。

 今年で7年目を迎えるキャッサバ作り。栽培して販売するにあたって、日本国内でブラジル人がどこに多く住んでいるのか詳細に調べ上げたのを思い出す。いわゆるマーケティングだ。日持ちのしないキャッサバを新鮮な状態のまま、お客さんに渡したい。お客さんに「おいしい」と喜んでもらいたい。そんな思いからだった。

 ここ数年は東京・代々木公園で毎年開かれる「ブラジルフェスティバル」にも顔を出している。ブラジル人が母国の料理を食べたいと思ったとき、主食のキャッサバ以外もさまざまな食材が必要だ。直接ブラジル人と話してリサーチすると、「あれも作ってくれ、これも作ってくれ」「こんな野菜は知ってるか?」などと言ってくる。もちろん、日本では聞いたことのない名前の野菜ばかりだ。

 例えば「ビーツ」。ロシア料理のボルシチに欠かせない野菜で赤カブのように見えるが、実はホウレンソウの仲間らしい。他には、ナスに似た形をした「ジロ」、キュウリの仲間「マシシ」、日本ではハヤトウリと呼ばれる「シュシュ」なんていう名前の野菜もある。

 これらの野菜も現在、邑楽町の畑で栽培している。昨年はキャッサバを買ってくれたお客さんに「これも食べてみて」と無料で配った。反応は上々だったので、今年はキャッサバといくつかの野菜を合わせたセットで販売してみようかと思っている。

 農業を営んでいると「地域に育てられている、支えられている」と実感する。この時季は畑に堆肥をまくのだが、正直言って臭い。今年は新型コロナの影響で、室内の換気が特に必要だった。そんなときこそ、「おいしい野菜を作って地域に恩返しをしたい」と心から思う。決して「自分たちだけ良ければいい」なんて気持ちは起きない。

 アグリファームには直売所がある。おいしい野菜を作ることができたらお客さんが大勢邑楽町にやってくる。ついでに地域の飲食店や観光地に立ち寄ってくれたら、地域全体がウィン―ウィンになるはず。まさに「今が頑張り時」と自らに言い聞かせている。



農事組合法人アグリファーム代表理事 大川則彦 邑楽町新中野

 【略歴】2014年からキャッサバ栽培に取り組み、17年にアグリファーム設立、代表理事。インテリア大川代表。邑楽町生まれ。桐丘短大(現桐生大短大)食物科卒。

2020/06/11掲載