夏本番のこの時季は、木の実を収穫したり、保存食を作ったりと大地の恵みを感じながら暮らしています。少し前には実サンショウを採ってしょうゆ漬けに、ジューンベリーはジャムに、青梅は梅ジュースにと、家中の瓶がなくなるくらいおいしい物を保存できました。古き良き暮らしの知恵を活用すると旬の物をおいしく食べられ、豊かな気持ちになります。

 工房で作るげたは桐の木を使っています。桐には調湿性があり、汗をかいても吸い取ってくれるので、快適に履くことができます。じめじめと蒸し暑い夏にはカランコロンという音も涼しげに感じられます。

 げたの土台にはたくさんの種類があるのをご存じでしょうか。一言でげたと言っても駒げた、右近、高右近、仕官、千両、ぽっくりなどその土台の形はさまざまです。

 カランコロンと鳴る典型的なげたは駒げたです。歯が2本あり、二本歯とも呼ばれます。

 駒げたと並んで一般的なげたは右近です。駒げたよりも土台が低く、足裏の曲線にフィットするように波を打つような形です。底にゴムが付いているものもあり、滑りにくいため、げたを初めて履く方にお薦めです。

 運動靴のサイズ選びとは違い、げた選びでは足の大きさと土台の長さはそれほど重要ではありません。かかとが土台からはみ出た方が履きやすいためです。靴のようにかかとまで覆わないので、土台の長さは細かく設定されていません。

 重要なのは、足の指と鼻緒の高さが合っているかどうかです。親指と人さし指の間にくる鼻緒の部分を前坪と言います。鼻緒は布でできているので、履いているうちに前坪は多少伸びます。この伸びによって自分の指の高さぴったりになり、履きやすくなります。

 また、げたには左右がないので、履くたびに左右を入れ替えると擦り減りが均一になり長持ちします。

 げたで歩くと自然と姿勢が良くなると言われています。それは鼻緒を足の指でつかんで歩くことで、指の付け根に力が入りやすく、普段あまり使わない足の筋肉を使うからだそうです。外反母趾(ぼし)や偏平足の人、足の筋肉を鍛えたい人にもお薦めです。

 げたは土台に三つの穴を開けて鼻緒を結び、指に引っかけて履きます。じっくり見てみると、鼻緒は最小の面積で履物を安定させる構造だと気が付きました。

 桐の特性を理解して、シンプルな中に機能も兼ね備えた美しさを持つげたの形を作った先人の知恵は本当に素晴らしいと感じます。それが現代でも使われていることも貴重で、この先もずっと続いてほしい文化です。

 今年の夏はげたを履き、足を開放してみてはいかがでしょうか。

 【略歴】2018年に沼田市の地域おこし協力隊員になり、3年間、沼田桐下駄の技術を学ぶ。任期後も製作を継続。埼玉県出身。拓殖大大学院修士課程修了。

2022/7/10掲載