IHIエアロスペースはi-Gryphonと名付けたドローンを開発している。最大の特長は、ロータリーエンジンを主動力としているため20キロ程度の荷物を搭載しても1時間ほどの長時間の飛行が可能となる点にある。素早い応答が可能な電動プロペラによる姿勢制御を併用し、安定した姿勢制御と操作性を確保している。GPSを利用した目的地までの自律飛行や自動離発着機能もある。

 ドローンは2010年代に入り、姿勢制御のためのプロセッサーとセンサーを小型化する技術が実現したことで世界中で普及した。10年代後半からは大幅な性能向上により利用価値が増大した。高解像度カメラの搭載による撮像ツールとしての有効性、高精度センサー搭載による計測・測量やインフラ点検、農薬散布、セキュリティー監視など、用途は広がり続けている。

 特に最近注目されているのは物流分野への適用である。ドローンは人手を介さず自律航行が可能なことから省人化・無人化の切り札として期待され、離島や山岳地区などへの物資輸送、災害時に孤立した地区への医療・救援物資の輸送にも期待されている。

 さまざまな分野で活用が進むドローンだが、安全性を担保することが普及の条件だ。建築物への衝突、ドローン同士や航空機との接触があってはならないし、空から物が落下してきては困る。

 飛行技術に応じて1~4にレベル分けされており、現行の航空法での飛行許可はレベル1「目視内・操縦飛行」、レベル2「目視内・自動/自律飛行」、レベル3「離島・山間部などの無人地帯での目視外飛行」までである。

 近い将来、レベル4「都市部などの有人地帯での目視外飛行」が可能になる見通しだ。飛行できる機体の認証制度制定や操縦者資格の新設など、ドローンによる輸送への道を開き、無人配送・輸送サービスの育成を国が後押しする。

 脱炭素を踏まえた自律飛行技術の確立や空の交通管制、コストの問題など、技術的にも仕組み的にも解決しなければならない課題は多い。一方、ドローンはゲームチェンジャーとして新しい世の中の仕組みや産業を生み出す可能性を持っている。

 3年後の大阪万博では会場と国際空港を結び、有人操縦の「空飛ぶタクシー」を定期便として飛ばす計画で、国内外の企業が参加を予定する。空のパーソナルモビリティのための原形モデルを、日本はもちろん全世界に発信する機会となることに期待したい。

 わが社のルーツが中島飛行機であることはご紹介した通りで、大空そして宇宙をフィールドに新しい技術、商品をもって社会に貢献するDNAを有している。映画に出てくるような未来社会、タクシーや無人搬送車が空を飛び回る世界の実現という夢に向けチャレンジしていきたい。

 【略歴】現IHIに宇宙航空事業を譲渡する前の日産自動車に入社し、IHIに移籍。同社宇宙開発事業推進部長を経て2021年6月から現職。東京大工学部卒。

2022/7/11掲載