外出先で激しく子どもを叱っている人を見た時どう思いますか。受講生に聞くと「何もそんなに怒らなくても…子どもがかわいそう」と答えます。同時に「人の怒る姿を見ると、ひどいなあと思うのに、なぜ自分も同じことをしてしまうのか」と、わが身に重ね合わせて考え込んでいます。私にも経験があります。

 人はなぜ、怒りを人にぶつけるのでしょうか。

 まず、怒りの正体について考えます。ゴードンメソッドの創始者、ゴードン博士は著書『自立心を育てるしつけ』で「怒りは私たちが何かほかの感情を経験した後で自分から引き起こすものである。第一次感情を経験した結果、自分で怒りの感情を『製造する』のだ」と言っています。

 第一次感情、つまり「恐れ・拒絶感・心配・不安」などを初めに感じ、その後に相手への戒めの感情や自分に嫌な思いをさせた相手を罰したいという感情が、怒りという現象になるというのです。

 こんな例が挙げられています。ある母親がデパートで子どもとはぐれました。母親の最初の感情は「どこ行っちゃったの? 何かあったらどうしよう。心配だわ」などの恐れや不安。これが、第一次感情。その後ようやく子どもを見つけた時、「本当に無事でよかった」と思うでしょう。

 ところが、口では、全く違うことを叫んでいます。「ママと一緒にいなさいって、あれほど言ったでしょう!」。これが第二次感情。怒りです。子どもが憎くて言っているわけではなく、二度とこんなことをさせたくないという親心からの言葉かもしれません。

 しかし、怒りの感情は、一般的には敵意や非難に満ち、「こんなに私を怒らせたあなたはダメな子ね!」という批判的なメッセージを伝えます。そのため、親の本当の気持ちは伝わらず、相手は攻撃されたと感じ、自分はダメな子なのだと自己否定感を深め、防衛の気持ちから心の距離を取ろうとするでしょう。

 では、どうしたらよいのでしょう。ゴードン博士は「怒りの前にある第一次感情は何かを自分に問うこと。そして、それを子どもに伝えることだ」と言っています。デパートの例での第一次感情は恐れや不安でした。ですから、そのまま「すっごく心配したよ。居ても立ってもいられない気持ちだった」と伝えます。

 親の気持ちが伝わると、子どもは「ごめんね。今度は離れないようにするよ」と、言うかもしれません。

 親が自分の本当の気持ち(第一次感情)に気が付き、それを伝えてみると、子どもからも本当の気持ちが返ってきます。すると、子どもがより身近に感じられ、さらにいとおしくなることでしょう。

 多くの人が怒りの正体を知り、対処法を使うことで、より親密で温かな人と人との関係づくりが進んでいくことを心から願っています。



親業訓練インストラクター 小柴孝子 高崎市中尾町

 【略歴】高崎市教育センター所長や小学校長を歴任。2015年に退職後、親業訓練インストラクターとしてセミナーを行う。同市子育てなんでもセンター教育相談員。

2020/5/11掲載