道の駅「ららん藤岡」には藤岡出身の三偉人として、関孝和、高山長五郎、堀越二郎の名を記した看板が掲げられている。

 高山長五郎(以下、長五郎)は養蚕学校・高山社の創設者である。高山社跡は世界遺産「富岡製糸場と絹産業遺産群」の構成資産の一つに指定されており、藤岡にとって最も重要な歴史遺産の一つとなっている。行政も世界遺産・高山社跡をアピールして地域振興を図っている。

 堀越二郎(以下、堀越)は太平洋戦争で活躍したゼロ戦や雷電などの海軍戦闘機の設計に関わった世界的航空技術者で、宮崎アニメ「風立ちぬ」の主人公として有名である。

 私は年に数回、関西に行き多くの関西人と話をするが、富岡製糸場は知っていても、世界遺産を構成するその他三つの資産やその歴史的・文化的価値を知る人、それに興味を持つ人には、一度も出会ったことがない。

 経験上、関西人の間では、高山社と長五郎は全く無名である。これは関西だけの傾向ではない。残念なことに、県外において高山社や長五郎を知っている人に会うことは、ごくまれである。

 一方、堀越は関西においても知名度が高い。県外で私が堀越の話をすると、うれしいことに多くの人が「今度、群馬に行ったら堀越の記念館に行きます」と言ってくれる。堀越の記念館は存在しない旨を伝えると大半の人は、けげんな表情を浮かべる。堀越ほどの有名人なら、顕彰施設があると考えるのは県外の人には当たり前の感覚なのだ。

 高山社と長五郎が、後世まで語り継ぐべき、まさに世界遺産にふさわしい歴史的意味を持つことは論をまたない。しかし、その長五郎でさえ、顕彰施設は存在しない。高山社を地域の歴史文化資源として守り伝えつつ、観光振興・地域づくりに役立てようというのであれば、現在の方法では限界があるのではないか。

 高山社よりも堀越の方が知名度、集客力があり、地域の経済、教育・文化力の維持・向上に貢献できると考えるのは私だけだろうか。藤岡にとって、堀越は最強ツールの一つであり、これを利用しない手はない。

 そこで提案したい。藤岡には、高山社顕彰会、堀越二郎ヒコーキの会という両者を顕彰する市民団体が存在する。これらの団体と行政が連携して、長五郎と堀越の顕彰施設を造り、高山社跡と堀越をワンセットにして売り出すという方法はどうだろうか。建設費用の調達については、クラウドファンディングや募金、協賛金などの方法もある。

 行政と民間団体が共通の目標を持って共に歩むことで、市民の一体感が醸成され、住民主体の地域づくりがさらに進むのではないだろうか。藤岡学はこの一助になればと考えている。



藤岡学研究会代表 塩出環 藤岡市三本木

 【略歴】2019年に同会を発足。行政書士。高校非常勤講師。元同志社大人文科学研究所研究員。専門は日本近現代史。神戸大大学院博士課程修了。博士(学術)。

2020/05/09掲載