勝利を簡単には諦められない理由があった。
夏の甲子園切符を懸けた群馬大会の初戦。8番一塁で先発出場すると、二回には守備で鋭い打球を好捕した。迎えた第1打席では見送ればボールとなるような内角高めの変化球を振り抜き、打球は外野へ。「上がりすぎたかな。何とか落ちてくれ―」。強く願いながら一塁を回ったが、打球は右翼手のグラブに収まった。
全国制覇を果たしたこともある強豪、桐生第一との対戦。序盤からリードを許したが、気持ちが切れることはなかった。グラウンドを駆け、白球を追えることが当たり前ではないことを強く実感していたからだ。
突然の出来事だった...