新型コロナウイルスの世界規模での感染拡大が続く中、国連の専門機関である食糧農業機関(FAO)と世界保健機関(WHO)、世界貿易機関(WTO)のトップが、「今回の危機に当局が対応できなければ、『世界的な食料不足が発生する恐れがある』と警告した」とのニュースを目にした。

 農林水産省によると2018年度の日本の食料自給率はカロリーベースによる試算で37%。過去最低という。裏を返せば63%を海外からの輸入に頼っているわけだが、日本に食料を輸出している諸外国が、食料不足を理由に輸出制限をかけたらどうなるだろうか。諸外国からすれば、日本に輸出するより自国民への食料確保に向かうのはいうまでもない。新型コロナが食料問題にまで派生する。改めて農業政策についても考えるべき時に来ている。

 私が邑楽町で栽培するキャッサバは、ブラジルを中心に南米で主食として親しまれている。隣の大泉町にはブラジル人が多く住むことから、秋の収穫期には「いつ頃販売しますか」という問い合わせをもらう。多い日には大泉町を中心に全国から電話とメールが約150件。反響の大きさに驚かされる。問い合わせをもらった全ての人にキャッサバを売りたいのだが、それは難しいのが現状だ。

 キャッサバは静岡や愛知などでも栽培しているようだが、多くは自家消費の延長程度で、7ヘクタールもの作付面積で栽培しているのはおそらく邑楽町だけのはずだ。しかし、それでも供給が需要に追いつかない。感覚的に10倍の開きはあるように思う。

 「作付けを増やせばいいではないか」と言われてしまうが、キャッサバはとても繊細で、栽培はそう簡単にはいかない。5年ほど前から栽培を始め、ノウハウを蓄えてきたつもりだったが、昨年は台風などの異常気象で収穫量が見込みの半分程度だった。

 加えて、収穫後はすぐ色が黒ずんでしまうなど傷みが早いのも特徴だ。ここ数年、複数のメディアに登場したこともあり、たびたび東京で売ってほしいというオファーをいただくが、東京ですら出荷するのは難しい。そのため、基本的に邑楽で直売するスタイルを取っている。

 販売する際、とにかく陽気なブラジル人が「ありがとう!」とオーバーリアクションで抱きついて喜んでくれる。冷凍の輸入品も専門スーパーなどで販売されているが、やはり取れたてがおいしいということなのだろう。この笑顔が何よりもうれしいし、やりがいにもつながっている。

 大泉町に住むブラジル人には非正規雇用で働く人も多い。新型コロナの影響で雇用が守られるのか心配だが、今はみんなで頑張って危機を乗り越えるしかない。そして今年こそ豊作となって、みんなで笑い合いたい。



農事組合法人アグリファーム代表理事 大川則彦 邑楽町新中野

 【略歴】2014年からキャッサバ栽培に取り組み、17年にアグリファーム設立、代表理事。インテリア大川代表。邑楽町生まれ。桐丘短大(現桐生大短大)食物科卒。

2020/04/20掲載