公共施設のマネジメントについて、これまで書かせていただきました。その中で触れた東吾妻町の取り組みが、一般財団法人地域活性化センター作成の地域活性化事例集で「今あるものを活用したまちづくり」の好例として特集されたので、紹介したいと思います。

 この地域活性化事例集は、ハード面の整備だけでなく、ソフト面の機能改善が加えられるとともに、地域の人々がその良さを再認識できるように工夫されているなど、地域活性化に貢献していることが掲載される条件となっています。

 東吾妻町役場の本庁舎は、旧来の町営温泉センターを用途変更したものです。公共施設のあり方を検討する過程で、あるものを有効活用する方向に舵(かじ)を切って誕生しました。

 今までの本庁舎は、建築後60年を経過し、町のシンボルとしては、陳腐化していました。さらに、有事の際に防災拠点とすべき施設としては、耐震性にも欠けるので、新たな庁舎が検討されていました。地方自治体が抱える財政逼迫(ひっぱく)状況の中で、将来の負担にならないように考慮した建設コストであるべきだとされ、新庁舎は既存資産を利活用した施設となりました。

 この本庁舎は、車で渋川方面から話題の八ツ場ダムへ向かう際に通る、日本ロマンチック街道の愛称のある国道145号で町中心部を通過中に右手に見える「城」です。「城」は、古くから日本人の心のよりどころになっているものです。

 以前は「岩櫃ふれあいの郷」として町民に親しまれていた施設です。NHKの大河ドラマ「真田丸」が放映された際に登場した旧岩櫃城をモチーフにして建設されたもので、町のシンボルとなっています。

 しかし、建築して20年が経過した温泉センターの機能を維持していくには設備機器の更新が不可欠であり、経費がかさむことが見込まれました。折から、旧庁舎の老朽化が進み、建て替え等の必要性を検討していたことが温泉センターの現状とマッチして、「あるものを有効に使う」ことにシフトした結果、新本庁舎に生まれ変わったのです。

 さて、皆さんは、庁舎に求められる機能は、何だと思われますか。通常、ハード面の主な要素として①耐震性および安全性の確保②災害時対応設備の設置③セキュリティーの強化④ユニバーサルデザインの導入⑤環境負荷の低減―等が挙げられます。本庁舎は、これらの要素をクリアして完成しました。

 東吾妻町は本庁舎の整備に合わせて、ICTを活用したワンストップサービスの提供を行っています。「城」の最上階にある展望室(天守閣)もお訪ねになり、有効活用ぶりをご確認ください。



県建設技術センターFM室長 高橋康夫 前橋市岩神町

 【略歴】2015年から現職。地方自治体の施設マネジメント支援、技術支援に携わる。1級建築士。元前橋市建築住宅課長。前橋工業高―足利工業大(現足利大)卒。

2020/04/14掲載