渋川市美術館・桑原巨守彫刻美術館を市役所第二庁舎に移転させる事業で、市が本年度一般会計補正予算案に計上した工事請負費が、市議会6月定例会と直後の臨時会の2度にわたって削除された。

 発端は定例会の予算常任委員会で、詳細な見積もりができ、工事に不可欠な「実施設計」が未完成と判明したこと。市議が「予算の根拠があいまい」と反発し、工事請負費を削除する修正案が成立した。臨時会は定例会閉会のわずか5日後に招集され、市側は実施設計が未完成なまま定例会での削除額をそのまま提案し、再び削除された。

 市によると、工事費は全体のデザインや規模などを決める「基本設計」の段階で、おおむねの費用を算出できる。実施設計の金額が基本設計を上回るケースは少ないとし、担当部署はこれまでも必要があれば実施設計の完成前に予算要求をしてきたとする。

 一方、市議会の多数は実施設計に基づく見積もりを重視。市側が早ければ9月にも着工する意向を示しながら、設計が未完成という状況も疑問視している。資材価格が高騰する中、基本設計での見積もりで十分か心配する声もあった。

 数字を巡る考え方の違いに、筆者は選挙の出口調査と得票の関係を連想した。限られた投票者に対するアンケートから全体を推測する出口調査は、多くのケースで得票確定前に当選者を予測しているが、開票結果そのものではない。

 基本設計から算出した金額にも同じことが言えないか。実施設計が完成していれば、より正確な工事費が分かり、使われる素材なども具体的にイメージできる。美術館移転は注目を集める事業だけに、充実した議論のためにも市側はもっと配慮する必要があったのではないか。

 工事費削除で移転の遅れを懸念する声もあるが、実施設計を早期に完成させて8月にも臨時会を招集し、予算を成立できれば予定通りの開館も不可能ではないはずだ。心待ちにしている市民のためにも市側の努力を期待したい。