卒業式。その道のりは決して順風満帆ではなかった。

 「誕生日っていい日だね」。喜びあふれる笑顔で17歳の誕生日を迎えた日、彼女の携帯電話に匿名で嫌がらせのメッセージが届いた。侮辱罪や名誉毀損(きそん)、迷惑防止法など法に触れる、耐え難い内容が次々に飛び込んできた。

 ある時は、教室の机上に携帯電話を置き忘れると、隠され、草木生い茂る河川敷に投げ捨てられてしまっていた。

 編入生というだけで少し目立ったのか、話したこともない同級生から嫌がらせを受け続けたのである。学校ではいじめ対策防止委員会が立ち上がり、ようやく個別指導が入った。それでも嫌がらせはなくならなかった。

 その背景に何があるのか。加害者も理解してもらいたかった被害者かもしれない。

 高3の春、彼女はついに学校に行くことをやめた。多様な生き方があっていい。けれど、自身の歩む道を他罰でも自罰でもなく歩んでいってほしい願いがあった。

 私は毎晩彼女とさまざまなことを語り合った。季節は春から夏になり、夏休みが終わろうとしていた。彼女は「卒業できるかわからないけど3月まで通う」と口にした。

 それからの彼女は熱が出ても授業に出た。しかし、「成績のつけようがない」と教員に言われ、泣きながら電話をかけてきたこともあった。卒業を懸け1日も休めない緊張した日々。周りの生徒が進路を決めていく中、卒業の見通しが立つまで就活はできず、教習所通いを含めて全てが先送りになった。

 筋書き通りに事は運ばない。それでも志を新たにし、苦難の中にもありがたさをみて、解決の糸口が自分の中にあることを彼女は学んでいった。

 彼女はこう振り返った。

 「私は学校でのいじめがつらく何回も何回もやめたいと思ってきました。本当にたくさんのことがありました。児童相談所や学校ともたくさん話し合ってきました。その時私は心が弱く生きることに疲れ切っていました。そんな時、ファミリーホームの職員さんの言葉で私はひとりじゃないと気づかされました。そこからの立て直しが一番頑張ったと思います。どうでもいいと思っていた自分の人生を前向きに光あるほうに考えられるようになったのは、確実にファミリーホームの人たちが私のことを大切に思ってくれて考えてくれていると身に染みてわかったので、それが私の力になっていったのだと思います」

 日常は写し鏡。私たちは手綱離さず、困難こそチャンスに変え、伴走していく。

 一粒ずつまいた種が、時期が来て実を結び、きれいな花を咲かせていく。いま彼女は夢だった美容関係に内定をもらい、高校を卒業し、仮免も合格し、次々と美しい花を咲かせている。卒業おめでとう。



ファミリーホーム「循環の森やまの家」代表 宮子宏江 前橋市富士見町引田

 【略歴】前橋市の児童養護施設「鐘の鳴る丘少年の家」に勤務した後、2017年6月にファミリーホーム「循環の森やまの家」を立ち上げる。伊勢崎市出身。

2020/03/24掲載