「文化県群馬」。1981年に群馬県は、こう宣言した。2012年には、県文化基本条例も制定されている。これを見る限り、群馬の文化を取り巻く環境は盤石のように思われる。

 昨年、改正文化財保護法が施行され、文化財の保護と活用に関して、自治体の権限が大きく認められ、文化財などの歴史遺産を文化資源・観光資源として、また地域振興のツールとして活用する道が大きく開けた。文化財を活用した地域づくりをどう行うか、各自治体の文化行政の質が問われることとなった。

 県内の歴史文化を見ると「富岡製糸場と絹産業遺産群」、「東国文化」が両輪として存在していることは、大きな強みである。3月27日に世界遺産センター「『世界を変える生糸(いと)の力』研究所」(略称セカイト)がオープンする。セカイトは群馬の歴史文化の拠点として、圧倒的な存在感を示すに違いない。

 私はこの機関に大いに期待している。ここから県の歴史文化を利用した地域づくりの本気度がうかがえるだけでなく、世界戦略さえも読み取ることができるからだ。セカイトが名称通り世界を変えた絹産業の展示・研究施設として世界を見据えるのは文化県群馬を標榜(ひょうぼう)する以上、当然の流れである。職員の雇用先を増やしただけの施設になることは、文化県としてあってはならない。

 西欧では、歴史遺産の保護・研究体制が充実しており、研究員の数、歴史文化に投入される費用・人員は日本をはるかにしのぐ。西欧並みの体制の構築は日本の文化行政における国家的課題である。

 文化県群馬ならば、この課題を克服する手本となれる。セカイトには世界レベルの複数の専属研究員を置き、史料収集も含め、世界一の研究機関を目指してほしい。東国文化についても、専門の施設を建設し、一流の研究員を雇い、十分な費用をつぎ込んで、群馬の魅力度アップとその発信に取り組むべきである。

 文化予算の大きさにこそ社会の成熟度と民度、教育水準が示顕される。研究機関の整備・充実は文化県群馬の底力を全国に示す良い機会になるだろう。

 群馬の繭の生産量は減少傾向にある。一方、熊本県山鹿市で、民間企業が通年型の大規模な室内養蚕施設を完成させ、完全な人工管理下で年最高24回の養蚕を行うなど繭の大量生産に乗り出している。

 このままでは「繭と生糸は日本一」の群馬県が、その座を明け渡す日もそう遠くないのかもしれない。絹産業遺産を守るためにも、研究機関を拡充して文化県としての模範を示してほしい。

 セカイトの開館により、群馬県は今、地域文化力を問われていると言って良い。セカイトが群馬の文化水準の高さを国内、世界に見せつける場となることを期待している。



藤岡学研究会代表 塩出環 藤岡市三本木

 【略歴】2019年に同会を発足。行政書士。高校非常勤講師。元同志社大人文科学研究所研究員。専門は日本近現代史。神戸大大学院博士課程修了。博士(学術)。

2020/03/12掲載