夏に出回るダイコンは肉質が固く、辛みが強いのが特徴。品種改良によって一年を通して食べられる野菜になった。ダイコンに含まれる辛味成分のイソチオシアネートは、食欲増進や抗菌作用が期待でき、がん抑制の効果があるともいわれている。

共愛学園前橋国際大短期大学部生活学科栄養専攻教授 神保 京子さん

栄養成分

 ダイコンの根の白い部分は淡色野菜で、約95%が水分です。胃腸の働きを活性化させる酵素が含まれ、重要な働きをしています。

 葉は緑黄色野菜で、カロテンやカルシウム、カリウムや葉酸が多く含まれ、栄養価が高いです。葉付きのダイコンは、葉も調理しましょう。β-カロテンは油と相性が良く、炒めることで吸収率が上がります。

 

辛味成分

 辛味成分のイソチオシアネートは、ダイコンなどアブラナ科の野菜に多く含まれます。葉に近い部分には少なく、先端に行くほど含有量が増えます。先端部分は、虫に食べられないように辛味が強いとの説もあります。

 イソチオシアネートは、近年注目されている栄養成分です。食欲増進や抗菌作用、血液をサラサラにする効能が期待されています。抗酸化作用も高く、がん抑制に効果があるともいわれています。しばしば焼き魚に大根おろしを添えますが、とても理にかなった食べ方です。焼き魚の焦げに含まれる発がん性物質を抑制してくれます。

 辛味が増す仕組みは、すりおろすと細胞が壊れ、イソチオシアネートと酵素の一種であるミロシナーゼが混ざり合って起こる化学反応です。わさびやからしと同じ辛味成分のアリルイソチオシアネートが生成されます。

 一般的には輪切りにしたダイコンの断面におろし金を当てますが、側面を当てると繊維に沿っておろすことになり、辛味は強くなくなります。ゆっくりやさしく、汁気があまり出ないよう大きく動かすのがポイント。反対にピリッとした辛味を楽しみたい方は、手早く細かくすりおろしましょう。

コラム/ひげ根痕少ないと良品
 ダイコン表面の細いひげ根が、縦に真っすぐ並んでいると、辛くありません。ひげ根の痕(小さなくぼみ)が少ないほど緻密な肉質を持った良品です。
 太くずっしりと重くて白くハリがあると新鮮です。茎から葉までみずみずしいものを選びましょう。辛い先端は大根おろし、中央は煮物、葉の付け根は甘いので、サラダなどに向いています。

レシピ/夏ダイコンとミカンのサラダ

エネルギー182kcal/たんぱく質1.2g/炭水化物32.2g/食塩相当量0.2g

群馬大医学部附属病院 栄養管理部副部長 斉賀 桐子さん
 夏ダイコンはピリッとした辛味が特徴で、料理を引き立てます。このサラダは甘みがあり、さっぱりとした味わいです。暑い季節に最適な一品です。

◆材料(1人分)
ダイコン100g、缶詰ミカン100g、ダイコンの葉少々、調味液(リンゴ酢大さじ1.5、蜂蜜大さじ1、塩0.2g、こしょう少々、オリーブオイル小さじ1)
◆作り方
①ダイコンは薄い輪切りにし、缶詰のミカンは汁を切る。
②調味液を合わせて①のダイコンとミカンを一緒にビニール袋などに入れ、ダイコンがしんなりするまで冷蔵庫に入れる。30分以上が目安。
③ダイコンにミカンを挟んで盛り付け、ダイコンの葉があれば細かく刻んであしらう。


 

ダイコン栽培/片品村 星野 浩志さん(58)

 標高約900メートルの高冷地に位置する片品村築地地域は、冷涼な気候を生かして夏秋ダイコンを栽培している。収穫は6月上旬から10月下旬まで。30年以上栽培する星野浩志さん(58)は、夜明け前から作業に汗を流し、午前中には近くの出荷場に新鮮なダイコンを届けている。

朝採りで届ける新鮮さ

 40年ほど前から、築地地域はダイコンの栽培が盛んになった。星野さんが中学生の頃、父の立治さん(83)が取り組み始めた。
 価格低迷や高齢化に伴い、負担の大きい重量野菜が敬遠されるようになり、片品村で40軒以上あったダイコン農家は、現在10軒程度になった。そうした状況でも、星野さんは父親から受け継ぎ、ダイコン一筋で生計を立てている。

収穫したダイコンを手にする星野さん(前列中央)ら

1日1万本収穫

 星野さんは15ヘクタールの畑で、一般的な青首大根を育てている。1日10トン、約1万本を収穫し、年間出荷量は1000トンに及ぶ。

 新鮮な状態で出荷するため、収穫作業は日が昇る前の午前3時に始まる。車のライトを頼りに、10人以上で作業に当たり、黙々と一本ずつ手で引き抜く。

 畝に6本ずつまとめて並べ、葉は適度な長さに包丁で切り落とす。商品価値のない小さいものや変形したものは畝と畝の間にはじいていく。作業は午前6時ごろまで続く。星野さんは「新鮮さはもちろんだが、日に当たって土が乾くと落ちにくい」と作業効率の面からも朝採りのメリットを語る。

収穫後、作業場でダイコンを洗浄し、サイズごとに仕分けて出荷する

 収穫と並行してトラックの荷台にダイコンを積み込み、作業場に運ぶ。洗浄しながら重さを量る専用機械で土を落とし、M~3Lの4種類のサイズに仕分ける。「傷や色合い、虫食いや先が二股に分かれているかなどは、洗わないと分からない」といい、出荷する白く形の整ったダイコンと、加工品に回す規格外を入念に見分ける。乾かしてから箱詰めされ、県内や関東近郊の市場に出回る。

品質保つ土作り

 収穫が終わると、翌年に向けた良質な土作りが重要な作業になる。収穫後のダイコン畑を活用し、8月中旬から9月上旬に、麦の一種で緑肥となるエン麦の種をまいて育てている。11月に専用機械で生育したエン麦を反転させて埋め、さらに豚ぷんを加えて、水はけを良くするために深く耕す。

 土の中の害虫被害や連作障害を回避するため、土壌改良は欠かせない。こうした努力によってダイコンの品質が保たれている。

 農家が少なくなる中、5年前に就農した次男の貴也さん(32)は「まだまだ学ぶことは多いが、いずれ中心になれるよう励んでいきたい」と頼もしい。「安全安心で体にやさしいダイコン作りを目指し続ける」―。星野さんの情熱は、着実に次の世代に受け継がれている。

メ モ
 県内の主なダイコンの産地は片品村、伊勢崎市、太田市など。2020年産の作付面積は801ヘクタールで全国11位、出荷量は2万2100トンで全国10位。家庭で育てられ、30センチ程度深く耕し、市販の肥料を混ぜて土を軟らかくする。直径6センチ、深さ1センチほどに種を2、3粒まいて成長したら間引く。農業用マルチシートを張ると害虫対策になる。水は乾いたらまく程度。