調査のため現在、青森県弘前市に滞在しています。そこで同市と太田市が友好都市関係にあることを知りました。

 江戸時代、津軽藩の飛び地が大舘村を中心とする地域(現在の太田市)にあったことが縁となり、1985年に旧尾島町と旧弘前市の交流が始まったそうです。友好都市となったのは約30年前の91年です。市の観光館には親善交流の記念として「スバル360」が展示されていました。

 自治体が国内外の他地域と友好関係を結ぶことは少なくありません。しかし、その動機や意義にはどのようなものがあるのでしょう。ふと疑問に思いました。

 東京市町村自治調査会が2014年に発表した姉妹都市・友好都市に関する研究報告書が参考になります。そこには、自治体が抱える課題などの「弱み」に対して、交流先が有する「強み」を生かすこと、多様な行政基盤のバックアップを図ることなどの可能性が指摘されています。調査は東京の多摩・島しょ部地域を対象としたものですが、同調査会の踏み込んだ指摘になるほどと思いました。

 しかし行政目線ではなく、生活者の視点で考えると、その意義はさらに広がるのではないでしょうか。例えば、弘前市で過ごすことは私にとって初めての経験でしたが、群馬の存在を身近に感じたことが安心につながりました。群馬ゆかりの事物を弘前の人たちが「知っている」と感じることで、見ず知らずの地でも自分の居場所を見いだすことができたように思うのです。

 太田・弘前友好都市は、太田から弘前へ、また弘前から太田へと「共感」する気持ちも育んでいます。私が群馬から来たことを知ると、皆さん口をそろえて「猛暑は大丈夫ですか」と声をかけてくれます。報道の影響もあるでしょう。しかし、その声がけに「ねぷた祭りが開催できそうで良かったですね。実は群馬にも同じものがあるのですよ」と応えると会話に花が咲きます。

 交流サイト(SNS)全盛期とも言えるこの時代にあって、友好都市といった「つながり」は古くさく思われるかもしれません。でもこの地で感じたのは、自分一人が誰かとつながるというより、育ってきた地域が他と「丸ごとつながる」温かさです。

 弘前市内で教員だった方が「地域とは単に地誌的なものではなく、地理的にも歴史的にも広がりと深みを持つ人間味あふれた概念だ」と教えてくれました。そしてこれからは「地域に根差す」だけでなく「地域に根立つ」ことが大切だと話してくれました。自分の地域を土台としながら、地域外へと発想を広げ、その中で自身の生き方や社会の在り方を考えていく態度です。

 自治体間の交流には大きな可能性があると言えそうです。尾島ねぷたの開催を願いながら、今夏は弘前を楽しみたいと思います。

 【略歴】専門は国際協力学。外務省研究調査員などを経て2016年、前橋国際大に着任。著書に「群馬で学ぶ多文化共生」。福島県出身。東京大大学院博士課程修了。

2022/7/15掲載