新車の納期待ちについて説明する販売担当者=高崎市緑町の富士スバル高崎店

 コロナ禍や世界的な半導体不足を背景に、自動車の需給が逼迫(ひっぱく)している。車に対する消費者の購買意欲は衰えていないのに、「車が足りない」状態が続く。自動車王国と呼ばれる群馬県内で、自動車が不足するという新たな時代が到来している。

 今月初め、トヨタ自動車(愛知県)の人気スポーツタイプ多目的車(SUV)を巡ってあるニュースが流れた。「ランドクルーザー受注停止」。生産能力を大幅に上回る注文が入っており、納期は一時4年程度にまで延びていた。自動車全般の需給逼迫を象徴する出来事だった。

 要因は世界的な半導体不足の解消にめどが立たないことだ。トヨタ自動車は生産遅れに関し、車種によっては当初予定の納期に間に合わなかったり、通常以上に時間がかかることを説明する。

■コロナ発端

 自動車メーカー各社の減産は、2020年春の新型コロナウイルス感染症の拡大に端を発する。感染防止のために経済活動の多くがストップし、自動車製造に携わる国内外の工場が停止。海外からの部品供給にも遅れが生じた。

 群馬県に国内唯一の完成車工場があるSUBARU(スバル、東京都渋谷区)もフル稼働できない要因は同じだ。

 20年夏以降、経済活動の再開で生産が徐々に回復したが、21年に入ってからは半導体不足に伴う部品の供給制約が深刻化。21年の生産台数は前年比15.8%減の約74万台と落ち込んだ。今年1~5月の生産台数は回復傾向とはいえ、前年同期比2.4%増の約31万台にとどまる。同社広報部は「半導体不足がいつまでに解消するのか明確に分からない」と話す。

■苦しい立場

 より苦しい立場に置かれているのが、自動車販売の現場だ。メーカーの生産状況がすぐに変わるため、購入者に正確な納車時期を伝えることが難しくなっている。県自動車販売店協会がまとめた今年6月の県内の新車販売台数は、前年比14.4%減の4173台。販売店の多くが「需要はあるのにすぐに売れる車がない」(同協会担当者)という事態に直面している。

 ディーラーの富士スバル(前橋市本町)によると、7日時点の新車の納期は平常時より3カ月から半年長く待つ状況だ。

 同社総合営業推進部は「半導体不足に中国・上海の都市封鎖(ロックダウン)による部品調達難、ロシアのウクライナ侵攻などさまざまな要因が重なっている。ここまで納期待ちが長引くのは初めてだ」と困惑する。

 群馬経済研究所の河村英輝主席研究員は「効率的に生産されてきた自動車だが、世界情勢を考えると元通りに戻すことは難しそうだ。(これまで自動車各社は)幅広い車種を発売して購買を促してきたが、今後は生産する車種を絞るなど、販売戦略の転換を余儀なくされる可能性がある」と指摘する。