ロシアのウクライナ侵略が始まって4カ月が経過し、この戦争の終結を巡って意見の違いが表面化している。いずれの立場にも一理があり、その調整は容易ではない。西側諸国はウクライナとの意見調整を急ぎ、一致した支援と対ロ政策を堅持すべきである。

 「72時間以内にキーウ陥落」という当初の悲観的予測を覆し、ウクライナ国民と軍は強靭(きょうじん)な抵抗力を示した。米欧間の相互不信が高じて「脳死状態にある」と言われた北大西洋条約機構(NATO)も結束力を回復した。先進7カ国(G7)も大規模なウクライナ支援と前例のない厳しい対ロ制裁措置を講じた。

 この戦争の行方に関して三つの異なる立場がある。

 第一に、侵略者ロシアに致命的打撃を与えて処罰し、ウクライナの失われた領土を完全に回復することを最優先する「正義の立場」だ。ゼレンスキー大統領は、必要な兵器があればロシア軍を打倒できると主張し、長距離砲などの重火器の供与を欧米に要求している。

 第二は、速やかな休戦と講和を実現し、死傷者と破壊の増加を食い止めるべしという、平和を最優先する立場だ。軍事専門家はロシア軍をウクライナ領土から完全撤退させるのは困難であると見ている。戦争が長期化し、深刻な人道危機(多数の死傷者、大規模な破壊、難民の大量発生)が危惧される。ロシアに一定の譲歩をしてでも速やかに休戦と講和を実現すべきであると主張する。

 第三は、経済的な苦境への対応を重視する。対ロ経済制裁が原因の全てではないが、西側諸国でも物価の高騰や食糧不足、景気の後退が重なり、人々の生活は厳しさを増している。民主主義国の指導者は国内の批判に敏感だ。国際的にも途上国を中心に早期の戦争終結による経済の回復を求める声は強まっている。

 ドイツ、フランス、イタリアなどの諸国は速やかな休戦と交渉による解決への期待を表明している。マクロン仏大統領は交渉による戦争終結を実現するには「プーチン大統領を追い込み孤立させてはいけない」と述べている。

 バイデン米大統領は巨額のウクライナ支援を続け、西側の結束を主導するが、足元は不安定だ。バイデン大統領の国際的指導力は国内の支持につながっていない。11月の中間選挙に向け、バイデン政権の関心は国際問題よりも国内政治に向かう。インフレ抑制は選挙対策の最優先事項だ。

 殺りくと破壊を繰り返す「消耗戦」を仕掛ければ、利害の異なる西側諸国を分断し、ロシアに有利な状況が生まれるとプーチン大統領が判断している可能性がある。

 ロシアの暴挙を断罪するには、異なる利害を超えて西側諸国の結束とウクライナとの連帯が不可欠である。米国の役割が重要だが、日本も西側の有力な一員として結束と連帯に尽力すべきだ。

 【略歴】日本国際問題研究所上席客員研究員を兼務。ブリティッシュコロンビア大客員教授などを歴任。伊勢崎市出身。前橋高卒。一橋大大学院で博士号取得。

2022/7/18掲載