衛星に指示を出した直後に、衛星が撮影した地球(群馬高専提供)

 群馬高専(前橋市)の学生でつくる開発班が、従来難しかった超小型衛星の高精度な姿勢制御技術の実証に成功した。高専側が独自に定め、宇宙航空研究開発機構(JAXA)が承認した3段階の成功レベルのうち最高の「エクストラサクセス」を達成した。指導した同校の平社信人教授(52)は「将来、個人で人工衛星を作る時代が来た時に活用される可能性がある」としている。

 同校を含む国立高専10校が共同開発した超小型衛星「KOSEN-1」を搭載した小型ロケット「イプシロン」が昨年11月に打ち上げられ、4月まで軌道上で三つの課題に挑戦していた。その一つが、衛星を目標方向に向かせる姿勢制御技術の実証だった。

 通常、小型衛星で姿勢を制御しようとすると動きが乱れやすく、高精度の制御は難しいとされる。開発班は独自に「デュアル・リアクションホイール」を製作。衛星の姿勢制御装置を動かすモーターに内蔵する1枚のホイールを、薄型の2枚に分けた。2枚を反対方向に回すことで生じる運動量を動力源に、モーターが回転したり停止したりする。2枚で細かく制御することで、従来よりも精密に衛星を動かせる。

 今回の実証で、地上から「3秒間で45.8度回れ」と指示を送ると、制御装置内でホイールが回転して衛星も回った。データを解析すると、その角度は3秒間で44.93度。その後、ふらつくことなく10秒間ぴたりと止まった。エクストラサクセスの基準を「誤差5度以内」とした中、わずか0.87度に収めた。

 機体を組み立てた同校機械工学科専攻科2年の伊藤優介さん(21)は「予想外の結果」と驚きつつ、モーターの配線1本にいたるまで丁寧に組み立てたことが奏功したと分析。装置を設計した同2年の鈴木颯太さん(22)は、「小型衛星の可能性が広がり、宇宙開発に貢献できたのではないか」と喜んだ。

 学生に助言した平社教授は「言い過ぎかもしれないが世界最高峰の技術だ」と胸を張る。JAXAは「学業と並行して実証を成功に導いたことは素晴らしい」とたたえた。

 文部科学省によると、2020年の宇宙関連の市場規模は40兆円で、20年後に4倍の160兆円に上ると予想されている。民間の飛行計画が次々に進み、身近になりつつある宇宙。平社教授は「衛星を自作する時代が来る」と予想。このホイールが「消費者の選択肢の一つになれば」と夢を語る。