群馬大生体調節研究所(前橋市)の白川純教授らの研究グループは18日までに、血糖値を下げるホルモン「インスリン」の分泌が糖尿病になると低下する原因を解明したと発表した。糖尿病は膵臓(すいぞう)からのインスリン分泌が低下すると発症するが、その原因は分かっていなかった。まだ見つかっていない糖尿病の根本的な治療法を見いだす手がかりとして期待される。

 遺伝や生活習慣から糖尿病になるとインスリンの分泌が減って高血糖な状態が続き、悪化すると失明することもある。糖尿病患者は国内に約2千万人いるとされる。インスリンは膵臓の膵島(すいとう)にあるβ細胞内で、カルシウムのやりとりが起こることで分泌される。

 研究では、糖尿病患者の膵島の細胞内にUCP2というタンパク質が健康な人よりも数倍多く存在することに着目。遺伝子組み換えでUCP2が過剰に作られるマウスを用意し、β細胞でのUCP2の役割を解析した。

 UCP2を過剰に作るマウスは糖尿病のような症状を示した。さらに、UCP2がβ細胞内のアルドラーゼBという酵素を増加させることでインスリン分泌に必要な①エネルギーを作るミトコンドリアの機能に障害を起こす②細胞内の小胞体から細胞質に送られるカルシウムが減ってしまう―ことを解明した。逆にアルドラーゼBを抑えることで、ミトコンドリアの機能低下やカルシウムの減少も抑えられた。

 カナダや米国の研究機関と協力し、ヒトの膵島でも同様の作用があることを確認した。UCP2の増加からインスリン減少までの過程が解明されたことで、UCP2とアルドラーゼBのそれぞれに着目した治療法の開発につながることが期待される。

 同研究はカナダのアルバータ大学と米国のジョスリン糖尿病センター、横浜市立大学、理化学研究所と共同で行った。

 医師として糖尿病患者の治療にもあたる白川教授は「患者は食事療法をしたり、人工透析に通ったりと大変な思いをしている。β細胞を回復させて糖尿病を根本的に治す治療法を見つけたい」と今後の研究を見据えた。