2018年に文化財保護法(以下、保護法)が改正され、都道府県は「文化財保存活用大綱」(以下、大綱)を、市町村は大綱に基づき「文化財保存活用地域計画」(以下、地域計画)を策定することが制度化された。本県は19年度に、いち早く大綱を策定した。

 大綱と地域計画の策定指針では、未指定文化財を含む多様な文化財の総合的な調査・把握と保存活用が求められている。これまで保護法で調査が規定されていたのは埋蔵文化財だけで、文化庁が未指定文化財の調査に触れるのは画期的なことである。

 遺跡や遺物などが埋まっている可能性がある「周知の埋蔵文化財包蔵地」やその隣接地で土地を掘削したり形状を変えたりする際には届け出が義務付けられ、その中で調査が必要と判断されると発掘調査が行われる。県内で20年度に工事などのために出された届は4043件。このうち発掘調査が行われたのは88件だった。

 これに対応するため、文化庁は各市町村に「文化財」ではなく「埋蔵文化財」専門職員の配置を求めている。このため市町村の文化財職員のほとんどは埋蔵文化財関係者になり、彼らが苦労して域内全ての文化財を担当する状況が生まれている。

 発掘の件数が多ければ、それだけ貴重な発見につながるケースも増え、人々の関心が集まり、保存活用への期待も高まる。また、調査に関わる人が増えれば技術や精度が高まる。

 現在の発掘調査は調査地点や出土遺物の詳細な調査・分析・データ化など、最新の科学技術を結集して行われる。当館も八ツ場の26年に及ぶ発掘調査の成果をフル活用して映像制作を行い、展示を展開している。

 一方、仮に包蔵地の上に古い建造物や巨樹巨木、古文書、美術品があっても保護法では調査対象外だ。そのため価値も分からないまま壊され、焼かれ、捨てられ、消滅や散逸が続いてきた。これが現在の保護法の限界である。

 地中のものは工事があれば壊され、二度と元には戻らない。地上のものは移動して調査することが可能で、価値が分かると売却の懸念が生じるなど、さまざまな理由からこのような制度になったのではないかと考えられる。

 しかし、保護法がこれら地上の文化財の調査も義務付けていれば、わが国の国土は今とは違う景観や町並みになったに違いない。地域の歴史はより詳しく解明され、地域の伝統はより大切に残されただろう。

 今後、それぞれの市町村で地域計画の策定が進められることになる。これまで調査の対象にすらならず、地上で“埋もれてきた”歴史文化を伝える文化財に、地域計画策定を通して光が当たって詳細に発掘され、次世代に伝える第一歩となることを期待している。

 【略歴】県内小中学校勤務後、県立歴史博物館学芸員など25年にわたり文化財分野に携わる。元県文化財保護課長。2021年4月から現職。国学院大学史学科卒。

2022/7/20掲載