難病の多くは成人期以降に発症します。そのため、多くの難病患者さんが治療と仕事を両立する上で何らかの問題を抱えています。

 2011年、障害者基本法が一部改正され、障害者の定義に「その他の心身の機能の障害」が追記されて難病が含まれました。地域社会との共生や差別禁止などが盛り込まれ、職業相談や雇用の促進などにも踏み込んだ内容となりました。さらに、16年の障害者雇用促進法の改正で、雇用における差別の禁止と合理的配慮の提供が全ての事業主の法的義務となりました。

 難病は診断までに時間がかかり、検査のために何度も通院したり、検査入院したりすることもあります。診断後は治療のために定期的な通院や時には入院が必要となり、仕事を休むこともあります。

 患者さんは、職場から「繁忙期には休んでほしくない」「他の人も大変なのだから、もう少し頑張ってほしい」と労働者として期待される一方、医療者から「今は治療を優先してほしい」「無理しないでほしい」「体調悪化につながる仕事はしないでほしい」と言われます。

 介護職の良子さん(仮名)は、突然眼球に強い痛みを感じ、難病が疑われて通院する日々が続いていました。ある日、上司に「来月、夜勤は何回できますか」と聞かれ、返答につまりました。職場が人手不足で大変な状況だったからです。けれど、体に負担がかかると病状が悪くなってしまいます。悩んだ末「日勤のみにしてほしい」と伝えました。

 しかし、「他の人に迷惑です。それであれば、いっそのこと辞めますか」と希望を聞き入れてもらえませんでした。

 「元気になったら職場に貢献したい。でも今は治療に専念したい」という気持ちと、「仕事を辞めたら食べてはいけない」という事情があり、1人暮らしの良子さんは眠れないほど悩み、難病相談支援センターに相談しました。

 良子さんは無理して働かなくてはいけないこと、目が見えにくいことを同僚にからかわれたことなどを、涙ながらに話しました。そして、今の自分にとって何が一番大切かを考え、休職して傷病手当金を受給しながら治療に専念することに決めました。

 職場に診断書を出して休職の希望を伝えると、後に上司から「難病だったのに無理を言ってしまい申し訳ない。体調が良くなったら復職の相談をしましょう」と連絡があったそうです。

 治療と仕事の両立に関する問題は、産業医や産業保健師ら産業保健スタッフ、主治医、ソーシャルワーカー、難病相談支援センターなどに相談することができます。そして、産業保健総合支援センターでは事業者や産業保健スタッフからの相談も受けています。1人で悩みを抱え込まず、まずは相談しましょう。

 【略歴】2004年から現職。14~19年、国の指定研究班で難病相談支援センターやピア・サポートに関する研究に従事。保健師、認定難病看護師。群馬大大学院修了。

2022/7/23掲載