ウクライナ情勢を背景とするエネルギー価格の高騰で、かんがい設備などに使用する農事用電力=ズーム=の料金が値上がりし、水利施設を維持管理する土地改良区の経営を圧迫している。群馬県内62の土地改良区はそれぞれ節電に努めるが、高騰が続けば農家が納める賦課金(組合費)の値上げを検討せざるを得ない危機的状況。農家にとっては肥料の高騰やコメ価格の下落も重なり、死活問題となっている。

 「電気代も生産資材も全てが値上がりしている。40年農家をやっているが、こんなことは初めて」。桐生市内でキュウリやコメを栽培する60代男性は嘆く。

 新型コロナウイルスの影響で消費が落ち込み、野菜やコメの販売単価が上がらない中で経費のみ上昇。群馬用水土地改良区(前橋市古市町)に賦課金を払って水を引いており、「賦課金が上がれば農業を続けていけるか不安」と漏らす。

 各土地改良区も電気代の高騰に頭を抱える。幹線水路より標高が高い農地には大型ポンプで水をくみ上げなければならない。農地に散水するスプリンクラーの水圧不足を補うための加圧ポンプも必要で、農事用電力の大半はそれらの動力として使われている。

 群馬用水は県央地域の農地約6300ヘクタールに農業用水を供給し、約1万3千人の組合員がいる県内最大の土地改良区。群馬用水によると、年間の電気代は東日本大震災を機に1億円に倍増した。今回のウクライナ情勢に伴う化石燃料の高騰で1億4千万~5千万円に膨れ上がる恐れがあるという。

 電気代削減に向け、今月の理事会でポンプの使用状況を検証して契約内容を見直すほか、給水量削減と節水の協力を求めることを確認した。賦課金の値上げは「農家の負担が増すので絶対に避けたい」としながらも、高騰が続いて国や県からの補助がなければ「(値上げを)検討しなければならない」とする。

 電気代の支援に乗り出す自治体もある。滋賀県は国の新型コロナウイルス感染症対応地方創生臨時交付金を活用し、琵琶湖の水をポンプで送る際などの電気代の一部を補助する準備を進めている。同県耕地課は「想定を超える高騰で、この先も下がる要素がない。緊急支援事業として対応する」と説明した。

 本県は現場の状況を確認するため情報収集を進めており、農村整備課は「県としての支援が必要という判断になれば、何ができるか検討したい」としている。

【ズーム】農事用電力 かんがい排水や脱穀調整など、動力の用途を農業に限定することで安く利用できる電力。料金は化石燃料(原油、液化天然ガス、石炭)の価格変動を反映させる燃料費調整制度により、毎月自動的に算定される