▼けちな人のことを「六日知らず」という。日にちを勘定するときに指を折って一日、二日、三日、四日、五日と数える。でも六日というときは指を開けねばならない。けちは握ったものは離さないので六日知らずなのだそうだ

 ▼おかずなしで食事をする家があった。前がうなぎ屋。焼き始めると匂いを嗅ぎながら食べる。家主がちょっと首をかしげた。「う~ん、きょうは少し細い」。慣れてくると太さまで嗅ぎ分ける。6代目三遊亭圓生が得意とした落語のまくらである

 ▼〈ゆふぐれし机のまへにひとり居りて鰻(うなぎ)を食ふは楽しかりけり〉と詠んだのは歌人の斎藤茂吉。長男の結婚が決まり、両家の顔合わせが築地の竹葉亭で行われた。緊張した相手の女性が少しだけ箸を付けてそのままにしていたら、「それを私にちょうだい」と取り上げてしまった

 ▼うなぎの缶詰を大量に買い込み、戦時中も食べていた。日記を調べると食べた回数は約900回。〈これまでに吾に食はれし鰻らは仏となりてかがよふらむか〉という歌まである

 ▼きょうは「土用の丑(うし)の日」。県内のうなぎ屋からもきっと食欲を刺激するいい匂いが漂っていることだろう

 ▼冒頭の噺(はなし)には続きがある。月末になるとうなぎ屋が「嗅ぎ代」を請求してきた。家主は小銭を筒に入れて鳴らした。「ほら、おかねの音がしているだろう。音を聞いたらお帰り」。上には上があるものである。