外はパリッ、中はジュワッとジューシーな油揚げは、フライパンなどでさっと調理できるので、あと一品欲しい時に頼りになる存在です。

 油揚げがどのように作られるかをご存じですか。「木綿豆腐を薄く切って油で揚げる」と思われがちですが、厳密には油揚げ専用の豆腐を作ります。この油揚げ用の豆腐を、通常の豆腐と区別して「生地」と呼びます。

 普通の豆腐に比べて豆乳濃度が薄く、内部に空気が含まれているため油に入れると膨らんでスポンジ状になります。揚げ方は低温・高温の2度揚げが一般的で、地域によっては3度揚げもあるようです。町の多くの豆腐店では、一枚一枚いわゆる「手揚げ」するため、フライヤーの前に立ちっぱなしとなります。

 以前取材した豆腐店の店主が「豆腐3年、揚げ10年」と、技術を体得する難しさを話していました。手頃な値段で販売されているが故に、油揚げ作りの手間や苦労は意外と知られていません。

 昨年、福井市で開催された油揚げの魅力を発信する異彩のイベント「あげフェス」に出かけました。福井市は総務省の家計調査で、1世帯当たりの油揚げ・がんもどき購入額が58年連続日本一の「油揚げ大国」です。四角く座布団のように厚みのある大迫力の油揚げは県外にも認知され始めています。

 イベントでは県内各メーカーの出来たてを食べ比べたり、職人が揚げる手さばきを見学したりできます。油に沈んだ生地が数十分かけてじっくりと黄金色に膨らむ姿に来場者の食欲が刺激され、行列が絶えませんでした。

 福井県では厚みによって「厚揚げ」「中揚げ」「薄揚げ」と呼称が異なり、調理法に応じて使い分けられています。本県で「厚揚げ」といえば、豆腐をそのまま揚げたもの(生揚げ)を指しますが、福井では厚い油揚げ。厚みがあるものは「揚げ煮」や「あぶらげご飯」に、薄いものは名物「越前おろしそば」にのせて食べることもあります。

 他にも、新潟県長岡市の「栃尾揚げ」、仙台市の「三角油揚げ」、京都府のおあげさんこと「京揚げ」、常温保存が可能な熊本の「南関揚げ」、愛媛の「松山揚げ」など、各地の多様な油揚げは実に興味深いです。

 暑さの厳しい時季に私がよく作るのが「油揚げの南蛮漬け」です。通常は魚や肉を揚げて調味液と合わせますが、あぶった油揚げを南蛮漬けにすると味がすぐに染み込み、油のコクがあるので物足りなさを感じません。コンロの前に長時間立ちたくない時に重宝する一品です。

 最近は代替肉が注目されていますが、油揚げこそ古くから精進料理に取り入れられてきた「大豆ミート」の先駆でしょう。みそ汁やあえ物の具材といった脇役のみならず、食卓の主役としてさらなる地位向上を期待します。

 【略歴】幼少期から豆中心の食生活を送り2013年に豆腐マイスターの資格取得。執筆活動・メディア出演などを通じて豆腐の魅力を伝える。前橋市出身。立教大卒。

2022/7/26掲載