至仏山への途中、原見岩あたりから展望が良くなる。尾瀬ケ原の向こうには燧ケ岳が見える
至仏山は高山植物の宝庫。岩の隙間にも小さなお花畑
強い日差しにも小さな花が輝く
至仏山頂は大パノラマだ
下山して鳩待峠で名物の花豆ソフトクリーム
翌日、早朝の尾瀬ケ原。ワタスゲが輝く
大清水へ向かう途中、前日登った至仏山を振り返る
カキツバタの濃い紫も湿原に映える
池塘に空が映り込む
ニッコウキスゲはまだ咲き始めだった
池塘に逆さ燧ケ岳
尾瀬沼の端にそびえる三本松
尾瀬で最も歴史ある小屋とされる長蔵小屋。別館のしゃれたカフェで一休みした
尾瀬沼の向こうに燧ケ岳

360度の展望と輝く朝の湿原

 唱歌「夏の思い出」に歌われるからか、多くの人にとって尾瀬を代表する植物でイメージするのはミズバショウだろう。ただ個人的には、ミズバショウと入れ替わるように咲き出す初夏のワタスゲに引かれる。7月2~3日、夏山登山解禁直後の至仏山(2228メートル)とワタスゲが輝く尾瀬ケ原を歩いた。

尾瀬沼、尾瀬ケ原、至仏山は「群馬の山歩きベストガイド」66~71、78~79ページ掲載

 至仏山へのスタートは、鳩待山荘のすぐ目の前にある登山口だ。日本百名山でもあり、たおやかな山容と高山植物の豊富さで人気が高い。登山口から樹林帯を進む。高度を上げ、原見岩に着くと展望が開ける。この後は尾瀬ケ原や燧ケ岳の眺めが素晴らしい。オヤマ沢田代を過ぎると分岐が現れる。至仏山へは直進、左へ折れれば笠ケ岳へと向かう。しばらく進むと「ピークかな?」という山が見えるが、これは小至仏山(2162メートル)。至仏山はもう一息先だ。

 至仏山は蛇紋岩でできていて、雨の日には非常に滑るので注意したい。だが、この非常に珍しい岩石のおかげで、ホソバヒナウスユキソウやオゼソウといった希少な高山植物の宝庫になっている。

 山頂は360度のパノラマが広がる。会津駒ケ岳や平ケ岳、苗場山、日光白根山、赤城山など百名山を見渡せ、眼下には尾瀬ケ原が広がり、ならまた湖も見下ろせる。

 登山道は山頂から山の鼻がある東面にも延びるが、こちらは植生保護のため登り専用だ。今回は鳩待峠からの山頂ピストンだったが、時間があれば鳩待峠から山の鼻を経由して登る周回コースも挑戦してみたい。

 この日は下山後、山の鼻に移動し山小屋に泊まった。尾瀬には何度も足を運んでいるが、宿泊するのは初めて。早朝の尾瀬ケ原はひときわ美しいと聞き楽しみにしていた。下界は40度近い猛暑が続く中、さすがの尾瀬も夜の初めまで暑く、部屋の窓を網戸にして眠りについた。

 翌朝5時過ぎ、山小屋を出発した。湿原は朝日に照らされ、光が透けたワタスゲや朝露に濡れたカキツバタが輝いている。今までに見たことのない尾瀬の姿だった。大清水に向かう長い道のりだが、立ち止まって写真を撮ったり、振り返って前日登った至仏山を眺めたりで、なかなか進まない。せっかくの機会なのでゆっくり風景を満喫し牛首を経て竜宮で、朝食のおにぎりを食べた。

 ちなみにミズバショウはピークをだいぶ過ぎて巨大化、ニッコウキスゲはちらほら咲き始めだった。

 再び木道歩き。ほぼ平坦なので、距離は長いが疲れはそれほどない。30分ほどで山小屋が集まる見晴に着いた。登山客が、ベンチや小屋のデッキでくつろぐ。ビールやステーキ、ケーキなどのメニューを掲げる看板もあって、ちょっとしたおしゃれな街角のようだ。住所は福島県桧枝岐村になる。

 ここから白砂峠まで登り、下ると尾瀬沼の沼尻に。燧ケ岳がぐっと近くなる。一休みした後、燧ケ岳への長英新道分岐を通過し、尾瀬沼東岸の会津街道沿いのエリアに着いた。尾瀬で最も歴史ある山小屋とされる長蔵小屋の別館で早めの昼食を取り、尾瀬保護財団の尾瀬沼ビジターセンターを見学。いよいよゴールを目指して出発する。尾瀬沼を離れ、樹林帯を進み三平峠を過ぎた辺りで雨が降り出し、レインウエアを着た。登山道を抜け、一ノ瀬から先は長い林道だが、仲間と2日間の山旅を振り返りながら歩いているうちに大清水に着いた。大清水から尾瀬戸倉まではバスで戻り山行を終えた。(I)

コースタイム 1日目5時間50分、2日目8時間5分(取材日・2022年7月2~3日)

 

 

 「群馬の山歩きベストガイド」(上毛新聞社刊)※は、本県の主要な山の特徴やルートをコンパクトにまとめたガイドブック。若い頃はあちこち出かけた山も、しばらく足が遠のいていたが、この春山登りを再開したのを機に掲載された「全座制覇」を思い立った。とはいえ、そう気負ったものではない。いつまでかかるか分からないし、途中で投げ出すかもしれない。自由に、気ままに、気長に、群馬の山を上毛新聞の記者が歩く。

 ※コースガイドと分かりやすいマップのほか、アプローチ、アクセス、コースタイム、適期やルート長・標高差などのデータを盛り込んだ登山ガイドの新定番。定価1540円。群馬県内の書店やインターネット通販Amazon(アマゾン)などで取り扱っている。問い合わせは上毛新聞社営業局出版編集部(電話027-254-9966)へ。