片品村で宿泊業を営む立場から、山を生かし、観光や地域の課題解決につながる可能性について考えています。

 3年ほど前から、グリーンシーズンに村内で開催されている山岳レースや、冬の新たな取り組みであるSKIMO(山岳スキー)の講習会や雪山ツアーなどに関わっています。いずれも地元の若者が中心となり、村内外の同級生や多くの山の愛好者の協力によって運営されています。

 これらのイベントを機に山をもっと活用することで観光の幅や人の輪が広がるのではと考え、2年前から、「20年後の村を、世界に通用する山岳リゾートにする」という大きな目標を掲げています。

 壮大過ぎる妄想かと思いましたが、機会があるごとに村の若者や競技者、愛好者らに話しているうちに、予想以上に多くの人が共感してくれるようになりました。もしかすると実現できるのでは、と期待が膨らみます。

 私は何かを実現したい時、不安とワクワク感を楽しみながら、目標に向けて今何をすべきかを逆算して考えます。やる前から問題点や課題を考え過ぎてしまうと最初の一歩を踏み出せなくなります。

 とりわけ大事にしているのは「踏み出せば何とかなる」の精神です。イベントを機に登山道や森林、景観が整備され、競技者や愛好者が通年楽しめる環境になったならば、夏の尾瀬や冬のスキーはもちろん、四季を通して山を含めた村全体を楽しむ観光客が多く訪れると考えます。

 新しい動きもあります。尾瀬では昨シーズン、冬の活用案としてアヤメ平へのモニターツアーが実施されました。スキー場はグリーンシーズンを有効活用しようとキャンプ場を運営しています。コロナ禍で生活様式や価値観が変わり、キャンプや登山などアウトドアレジャーの人気が高まっていることは、村にとって追い風と言えるでしょう。

 尾瀬国立公園の「尾瀬かたしなエリア」は4月、積極的に脱炭素を進める環境省の「ゼロカーボンパーク」に県内で初めて登録されました。国立・国定公園の範囲拡張に含まれる可能性もあり、魅力向上への期待が高まります。

 人口減や少子化、宿泊業や農業の後継者問題など、中山間地域の課題は山積みです。課題解決のため、本県の面積の67%を占める山林をもっと活用できないでしょうか。

 例えば片品村がモデル地域となり、同じように豊かな自然があって課題も抱えている利根沼田や吾妻地域、南牧村や上野村などの中山間地域と連携します。山の麓に宿泊施設や温泉施設、高原野菜の直売所や道の駅、そして何より田舎ならではのおもてなしの心を持った、魅力的な山岳リゾートとして地方から世界へ発信できるでしょう。

 国内外から観光客が訪れて活気が戻れば、各種の課題解決につながると考えます。

 【略歴】1990年から片品村でペンションを経営。2008年にサッカー大会を企画する「アルモンテ」を起業。16年にNPOと「さんさん森のようちえん」を設立。

2022/7/29掲載