▼江戸時代の侠客(きょうかく)国定忠治は無類の勝負強さで知られた。伊勢崎市国定町の養寿寺に墓があるが、「忠治の墓石を持ち歩くとギャンブルに勝てる」といううわさで削られ、すっかり丸くなってしまった

 ▼負け分を取り返そうと深みにはまるのが博打(ばくち)である。「博打はよしなよ。名前の通り、場で朽ちるってんだ」。志ん朝演じる落語「三枚起請」でいさめている

 ▼多額の横領事件が発覚するたび、動機として語られるのがギャンブルである。依存症患者は推計320万人。制限を決められない、勝った分を次に使おうと考える、ギャンブルしたことを隠す、負けたらすぐに取り返したい。二つ以上に当てはまれば疑いがあるという

 ▼心の病気だが、当人はそう思っていないから、治療につながらない。家族は借金の後始末に追われ、本人以上に傷つき疲弊してしまう

 ▼支援に取り組むのが「ギャンブル依存症問題を考える会」代表の田中紀子さんだ。先月、太田市内で開かれたセミナーで講演した。自らも依存症の夫と暮らすうちにのめり込んだ過去がある

 ▼同会には生活費を奪い取っていく子どもや夫を何とかしてほしいとの相談が相次ぐ。だが特効薬はない。田中さんは「自助グループや家族会とつながることが唯一の解決法」と訴える。薬物や酒、オンラインゲームなど依存症はさまざまあるが、自分で気づける人はいない。現代社会が抱える問題である。