絵本を紹介する(左から)寺沢さん、立木さん、三輪さん、福西さん

 アートのバリアフリー化を目指す一般社団法人メノキが出版部門「メノキ書房」(群馬県前橋市)を立ち上げ、初の出版となる絵本「みえなくなった ちょうこくか」を完成させた。視力を失った彫刻家をモチーフに「見えること」を問いかける内容。「障害にかかわらず誰もが紙の本を手に持ち、ページをめくり、紙の匂いを嗅ぎながら読書を楽しむ社会を」と訴えている。

 同書は木彫に長年取り組んでいた「あたし」が視力を失い、彫刻刀を扱えなくなった後も粘土造形で芸術表現を続ける物語。同法人代表理事で視覚障害がある彫刻家、三輪途道さん(55)=下仁田町=をモチーフに、温かな文と三輪さんの作品写真で仕上げた。

 文は三輪さんと20年来の付き合いがあるライター、立木寛子さん(66)が担当した。「せかいにあふれる たましいを あたしの手で かたちにしたい」「みえなくても みえるんだよ こころで みているよ」などとつづっている。

 「(内容が)ストレートで三輪さんがどう思うか不安だった」という立木さんだが、初稿を読んだ三輪さんは「私の精神状態がよく表れていて、読後に元気がもらえる」と喜んだ。

 メノキは「視覚に障害を持ったことで初めて見えたものを、アートを通して社会に還元できないか」と昨秋設立した。今後、大きな文字や、黒い背景に白抜き文字での表示など、見えにくい人向けの「ロービジョンブック」、視覚障害をキーワードにした書籍の制作などを計画する。

 副代表理事の福西敏宏さん(58)は「視覚障害と一口に言っても弱視から全盲までさまざま」とし、誰もが読みやすい本の制作に意気込む。メンバーでデザイナーの寺沢徹さん(66)も「本を通して生み出される感情共有は、障害の有無にかかわらず人としての本質ではないか」と話す。

 同書は8月中旬に県内書店に並ぶ予定。A3変型判フルカラー。32ページ。1980円。17~31日、前橋市千代田町の絵本専門店「本の家2」で同書に登場する三輪さんの作品などを展示する。同書の購入予約や問い合わせはメノキのホームページ(http://menoki.org/)へ。