田島弥平の肖像画

 近代的な養蚕飼育法を確立し、技術を具体化した「田島弥平旧宅」(群馬県伊勢崎市境島村)が世界文化遺産に登録された田島弥平(1822~98年)について、伊勢崎市は1日、生誕200周年記念事業を行うと発表した。登録から8年がたち、新型コロナウイルス感染拡大などの影響で来場者数が伸び悩む一方、周辺では蚕種製造民家の国有形文化財への登録が相次ぎ、面的な保存や価値発信の機運が高まっている。市は講演会や資料展示を通じ、弥平の功績や蚕種製造で栄えた境島村の歴史に改めて光を当てたい考えだ。

 弥平は初代・弥兵衛の長男として旧島村に生まれ、親子で養蚕技術の向上に励んだ。72年に「養蚕新論」、79年に「続養蚕新論」を刊行。養蚕建物では空気の循環の重要性を理論的に体系づけ、近代養蚕法「清涼育」を普及させた。安定した繭の生産に貢献し、蚕種をイタリアへ輸出するなど養蚕業発展に貢献した。

 記念事業の第1弾となる講演会は28日、市図書館で開催。世界遺産登録前から旧宅に関わってきた県文化振興課歴史文化遺産室の井上昌美室長が講師を務め、弥平の功績や登録までの道のりを語る。定員20人で、動画を後日配信する。

 同館は6日から先行企画として関連資料を展示。市重要文化財に指定されている「養蚕新論」の版木や刷り本など約20点を紹介する。

 境地区の歴史を知ってもらうため、市境図書館は9月3~25日、同地区の伝統建築家屋を題材にした「絵はがき原画展」を開く。展示する鉛筆画17点は、今年3月に解散した市境文化研究会から寄贈されたもので、旧宅や島村教会、旧県蚕業取締所境支所などが詳細に描かれている。

 市は11月にも、県立世界遺産センター(富岡市)と協力した講演会を企画している。

 幕末から明治期にかけて蚕種の産地として栄えた境島村は、良質な蚕種製造に向けた弥平らの研究の結果、大規模な蚕種製造民家が普及。旧宅周辺では重要伝統的建造物群保存地区(重伝建)の選定を目指す動きもあり、昨年以降、蚕種製造民家など6件が国登録有形文化財となった。7月22日にも新たに1件の登録が答申されている。

 伊勢崎市の臂泰雄市長は「当時、最先端の養蚕技術を確立し、海外にも果敢に出て行った弥平と、そういう偉人を生んだ島村は市民の誇り。今後も魅力を発信したい」と話している。