皆さんはどんな時、何がきっかけで旅に出ますか。行ってみたいと思うのは、何がポイントになりますか。

 観光に携わる私の仕事の一つに、旅のきっかけとなる「わくわく」を感じさせるということがあります。そして来訪地となる場所やその地域の人は、その「わくわく」を「楽しい」「面白い」「癒やされる」などの気持ちに変化させて、出発前の期待を超えることが求められています。

 旅の前にわくわくさせる手段には言葉や写真、動画があります。分かりやすく例えると、花火と聞くと「夏だ!」と気分が盛り上がり、行ってみようかとなる方が多いでしょう。さらに視覚に訴える写真や動画が「わくわく」を加速させます。

 旅先で味わってもらった「わくわく」を、また来たいという気持ちにつなげるには、ストーリー性やその地域「らしさ」が必要です。

 「わくわく」の中に、あるいはその先にストーリーを潜ませます。そして、イベントであれば、「らしさ」を感じるようなコンテンツを用意します。

 この「らしさ」は、地域でも確立していかなければなりません。ここが他と違うと明確に差別化を図れれば良いのですが、似たような自然や田舎は日本中にあり、独自性を見いだすのはなかなか難しいかもしれません。そうした場合、その地域らしいものを一丸となって創造していきます。新たに創り上げるのですが、ヒントは過去や現在にもあります。

 私は観光に携わるようになり、地域の歴史に触れる機会が増えました。ただ、学生時代は歴史の授業が苦手でした。ストーリーに関係なく、事実と年号を覚えるのが嫌いだったのです。

 しかし、地域に住む先輩たちの話を聞いたり、お客さまからの質問に答えるために調べたりすると、あら面白い。知り得た情報からその土地の成り立ちや、なぜ現在こうなのかを仮定してみて、観光の取り組みへのヒントにもしています。

 お客さまの心に残るものも同様なのかもしれません。キーワードがストーリーとつながると記憶に残るのではないかと考えます。そのためにストーリーを潜ませるのです。

 旅と言えば出会いも大切です。本欄で毎回述べていますが、地域の方々は重要な観光資源の一つなのです。

 ほどよいおらが村自慢、ほどよいおせっかいは、訪れた人と地域をつなげる役割を果たします。外国人向けのガイドで高い評価を得るのは「情熱がある(地域への愛)」「親切だ」「フレンドリーだ」などの要素です。

 恥ずかしがり屋の日本人ですが、人のうれしいことはそう変わらないと思います。ぜひ皆で地域と人をつなげるハブを担っていきたいと考えます。それは、地域の「らしさ」の一つにもなり得るかもしれません。

 【略歴】県をPRするぐんまコンシェルジュを経て、観光地域づくり法人赤城自然塾で事務局次長を務める。2022年4月から現職。NPO法人まえばし農学舎理事。