本年度の最低賃金改定で、中央審議会が1日に群馬県の時給を30円引き上げて895円とする目安を示したことを受け、県内の労働者は過去最大となる上げ幅を歓迎した。一方で経営者側は引き上げに理解を示しつつも、原材料価格の高騰が続く中での人件費の増加を懸念する。

 ▽労働者

 現在の最低賃金と同じ時給865円で働く前橋市のパート女性(40)は、引き上げを歓迎しつつ「まだまだ低過ぎる。もっと大幅に引き上げてほしい」と訴える。3月末に群馬県に引っ越した。以前は東京都港区で働き、時給は1300円だった。群馬県への移住後に求人情報を見た際、県内の時給の低さに驚いたという。

 「食料品など生活必需品の値段は東京も群馬も変わらない。そもそも最低賃金が都道府県ごとに違うことが不公平では」と憤った。

 連合群馬の鷲沢猛副事務局長は「過去最大の引き上げ額が示されたことは良かった」と受け止める。ただ、茨城県や栃木県の引き上げ額の目安は31円だったことを踏まえ、「近隣県との差が開いていってしまう。人材流出を防ぐ観点からも、少しでも上乗せできるように訴えていきたい」と強調する。

 ▽経営者

 一方、厳しい経営環境に立たされる県内中小企業の経営者らは、過去最大の引き上げ幅を複雑な思いで受け止める。

 高崎市内のプラスチック加工会社の60代男性社長は、外国人の技能実習生を積極的に受け入れている。「日本の賃金水準が低いままでは実習生が来てくれなくなり、人材確保が難しくなる」と、賃金を引き上げること自体には理解を示す。

 ただ、材料となる樹脂は原油高や円安を背景に高騰し、経営は厳しさを増している。「最低賃金が上がれば、連動して全従業員の賃金を見直さなければいけなくなる」と苦渋の表情を浮かべる。

 前橋市内の食品製造会社の60代男性社長も「物価が上がる中で必要なことだとは思うが、経営的にはなかなか厳しい」とこぼす。

 改定後は一部のパート従業員や定年後の再雇用者の賃金が基準を下回り、是正が必要になる可能性があるという。「賃金を上げても貯蓄に回ってしまっては意味がない」として、国などに消費喚起策を併せて実施していくよう訴えた。

 県商工会議所連合会の曽我孝之会長は「引き上げは理解できるが、企業は生産性向上と価格転嫁をスムーズに行えず現実は厳しい。地方の小さな企業にはその時給を支払えず、倒産するリスクが高まるのではないか」と懸念した。

 群馬県の最低賃金は、中央審議会が示した目安を参考に群馬地方審議会が審議し、12日ごろに引き上げ額を群馬労働局に答申。10月ごろに新しい金額が適用される。引き上げ幅はこれまで、昨年度の28円が最大だった。