▼藤岡市出身の航空技術者で、アニメ映画『風立ちぬ』の主人公のモデルにもなった堀越二郎(1903~82年)。零式艦上戦闘機(零戦)をはじめ、数々の戦闘機を設計した

 ▼零戦は、当時の世界水準を超える名機として名をはせ、米英軍からは「ゼロファイター」と恐れられた。大戦末期には特攻機として使われ、戦後は「戦争の象徴」であるかのように扱われた。堀越はそのことを思い悩んでいたという

 ▼航空機は大空を自由に駆け回りたいという人間の夢をかなえた。しかし、高速で、どこへでも行ける特性ゆえに、兵器として使われてしまった。〈比類なき資質を持つ雛鳥は、地上の人間の心と手に育てられ、兵器界の華として魔鳥の如く生長したが、それは航空機の罪ではない〉。戦後出版された『日本航空機総集』に、堀越はこんな一文を寄せている

 ▼素晴らしいものを生み出すのも人間なら、兵器に変えてしまうのも人間だ。それを自覚するとともに、同じ過ちを二度と繰り返すまいとの思いが感じられる

 ▼どんな技術にも光と影がある。「人々の生活を、より便利に、より豊かにしたい」との願いを込め開発した技術でも、使い方によっては逆の結果をもたらしてしまう

 ▼今年は堀越の没後40年、来年は生誕120年の節目の年。その業績や人となりを通し、時代が変わっても変えてはならない技術開発やものづくりの本質を見つめ直したい。