アンガーマネジメント研究に参加したお母さんたちの多くが「子どもよりも夫に腹が立つ!」と言っていた。「自分だって仕事をしているのに、なんで家事も育児も全部やらなきゃいけないの!」「どうしてゲームばかりやってるの?」「なぜ言われないとやらないの!」などディスカッションは白熱した。子どもと違い、相手は大人で期待値も高い分、不満も大きい。
訳書『マインドフルペアレンティング』に、「共に育てる」ことについての章がある。たとえ離婚していても、両親が互いに助け合い尊敬し合う関係であること、共に子育てすることは、子どもが成長する上で安心安全な状況をつくり出す。子どもにとってだけでなく、親自身にとっても、より良い育児ができる助けとなる。
共に育てることが、自分の子育てにも大きな影響を及ぼす。親が互いに不満を抱えていると、子どもに近くなり過ぎたり、疎遠になり過ぎたりする。自分の気持ちはさておき、子どもにとっては協力し合う親であることが、子どもの幸せや健康の質を大きく左右することになる。
言い争ったり傷付け合ったりしている場面を見せることは、子ども自身への虐待以上に、子どもの脳を変形させる。
しかしもっと良くないのは、言い争った後、子どもの前でそれを解決しないことだということが研究で分かっている。前回(6月15日付)述べたように、亀裂と修復が肝心だ。
パートナーとの間で何かいざこざがあり、子どもの前で口論したら、その後に、やはり子どもの前で相手に謝ることが最善策だ。さらには、日頃から子どもの前で互いを褒め合い、尊敬を伝え合うことで、自分自身も相手も、そして子どももより安定し、満足感が増す。
マインドフルペアレンティングで紹介されている方法をいくつか挙げよう。
①パートナーを観察する瞑想(めいそう)では、まるで初めて見るかのように相手を見る。価値判断せず、好奇心を持って観察し、さまざまなことに気付いてみる②パートナーについて書く実践では、相手が子どものためにしてくれていることに気付き、書き出してみる③慈悲の瞑想では、パートナーが最高の笑顔でいる様子を思い描きながら、「〇〇が幸せでありますように。〇〇が健康でありますように。〇〇が平安で守られますように」と声に出して言ってみる。〇〇に「私」や「子どもの名前」を入れてみよう。そうすることで自分自身が幸せになる。
見方次第で「違い」は「強さ」になる。違いがあるからこそ、チームとしてより柔軟な考えやバランスの取れた視点で、より多くの選択肢を持って難題に立ち向かうことができる。腹が立ったら声に出して言ってみよう。「違いは強さ!」
【略歴】40代で再び大学に入り看護師・保健師の資格を取得。筑波大大学院で母親のアンガーマネジメント、東大大学院では親のレジリエンスを研究。渋川市出身。
2022/8/7掲載