私にはまんじゅうの神様がいるのかもしれない。小さい頃からまんじゅうが大好き。小学生の頃は、父が土曜のお昼代わりに「焼きまんじゅう」を買ってきてくれるのが楽しみだった。みそだれの甘じょっぱい香りが部屋に充満して満腹になるまでいくらでも食べられた。

 群馬テレビの新入社員時代に「群馬には素晴らしいまんじゅうの歴史がある! 伊香保などの温泉まんじゅうと酒まんじゅう、そして群馬のソウルフード焼きまんじゅう。群馬三大まんじゅう史で番組を作りたい」と意気込んで失笑された。前橋市内の有名店、片原饅頭閉店の新聞記事に泣き、「そんなに残念ならお前が継ぎなさい」と母にたしなめられたこともあった。

 そんなまんじゅう好きの私に神様はいいタイミングでチャンスを仕掛ける。

 最初は2015年の前橋おもてなし料理コンテスト。下仁田ネギ入りの焼きネギ豚饅頭で最優秀賞をいただいた。

 次は17年、北関東のおいしいものを恵比寿で販売する「きたかんマルシェ」だった。東京のど真ん中で焼きまんじゅうを売るのは初めての体験。みその香りが漂えば、宇都宮のギョーザや水戸の納豆にも絶対負けないと思っていたが惨敗だった。

 焼きまんじゅうを東京の人はほとんど知らない。パンなのか? しょうゆ味なのか? 中にあんこが入ってないのにまんじゅうなのか? 思ったこともない反応に戸惑い、説明もままならないうちに終了。苦い経験から、「こんなにおいしい焼きまんじゅうをもっと県外の人に知ってほしい」という思いが芽生えた。

 19年にカフェを開業し、ドレッシングや焼き菓子の販売も始めた。そこで考案したのが焼きまんじゅうマフィンだ。日持ちのしない焼きまんじゅうをお土産として県内外の人に知ってもらえる最良の焼き菓子だと自負する。

 焼きまんじゅうを限りなく再現するために市内の老舗「たなかや」の秘伝のタレをそのまま練り込み、酒まんじゅうの麹(こうじ)の香りを感じてもらうために米麹から手作りする甘酒で香りと甘みを加えている。前橋東部商工会が主催する「美味しいまえばし再発見!おみやげコンテスト2019」の千人試食投票でグランプリをいただいたことからスタート地点に立った。

 販路拡大のため20年にムーカフェを開業し、一つ一つ丁寧に愛情込めて手作りしている。

 「焼きまんじゅうマフィンを食べたら本物の焼きまんじゅうが食べたくなった!」。これが一番聞きたい言葉だ。焼きたてが一番おいしい焼きまんじゅうを県外の人に食べに来てほしい。焼きまんじゅうマフィンで群馬の観光を盛り上げる一員になりたいと考えている。群馬のおいしいまんじゅう文化を、皆さんもぜひ全国に広めてほしい。

 【略歴】前橋市内で「創業カフェ ムーちゃん」「MOO CAFE」を経営。前橋街中テイクアウト連絡会代表。まえばしシティエフエムのラジオパーソナリティー。

2022/08/15掲載