
レタスは地中海沿岸、西アジアが原産のキク科の野菜。野生種は結球しない葉レタスだが、品種改良によって玉レタスやリーフレタス、サラダ菜などさまざまな品種が作られてきた。特徴的な成分として、鎮静や眠りを促す効果があることが明らかになっている。
旬と産地
レタスは全国各地で栽培され、通年流通しています。旬は春レタスが4~7月、秋レタスは11~12月が中心です。主な産地は長野県で、国内における総出荷量の約3分の1を占め、次いで茨城県、群馬県と続きます。夏は高冷地の長野県や本県、冬は温暖な気候の茨城県や静岡県、九州地方から出荷されます。
栄養成分
レタスは水分が約96%と野菜の中でも多い。栄養価は高くはないものの、βカロテン、ビタミンC、ビタミンE、カルシウム、鉄などの栄養素を幅広く含んでいます。部位や品種によって含まれる量に違いがみられます。玉レタスの栄養価は、緑色の外葉の方が高く、リーフレタスやサニーレタスでは、玉レタスに比べてビタミンCは約4倍、βカロテンについては約10倍も多く含まれています。
レタスの切り口から染み出る白い乳液には、古くから薬効があることが記されています。乳液には「ラクチュコピクリン(lactucopicrin)」という苦味成分が含まれています。一方で、気持ちを穏やかにする鎮静効果や、眠りを促す睡眠促進効果を示す成分であることが分かっています。
「玉レタスを4分の1程度食べると眠くなる」という俗説もあり、韓国では仕事前のドライバーが食べてはいけない食べ物として知られています。ちなみにラクチュコピクリンは、レタス類の属名「Lactuca(ラクチュカ)」と「苦味」を意味するギリシャ語「pikros(ピクロス)」との合成語と考えられています。

レタスは英語名で和名は「ちしゃ(萵苣)」といい、平安時代に中国から渡来したといわれています。8世紀には「萵苣」の記録があり、平安時代後期以降は「ちしゃ」と呼ばれるようになりました。品種により玉レタスは「玉ちしゃ」、コスレタスは「立ちちしゃ」、リーフレタスは「葉ちしゃ(ちりめんちしゃ、かきちしゃ)」、茎レタスは「茎ちしゃ」などと呼ばれています。
レシピ/レタスのシューマイ風

群馬大医学部附属病院 栄養管理部副部長 斉賀 桐子さん
レタス外側の濃い緑の葉を肉に巻き、シューマイ風にしてみました。皮膚や免疫機能を正常に保つβ-カロテンは、肉に含まれる脂質と一緒に取ると体への吸収が良くなります。
◆材料 1巻き(2人分)
レタスの葉3枚(100g)、A【牛ひき肉180g、乾燥キクラゲ3g(水で戻してみじん切り)、ニンニク1かけ(すりおろす)、卵?個、塩小さじ?】、練りがらし適量
◆作り方
①レタスの葉は軽くラップをかけて電子レンジで1分加熱
②Aの材料を粘りが出るまで混ぜる
③巻きすにラップを大きめに敷き、レタスの葉を広げる。レタスの幅に合わせて②を棒状に置き、巻きすで巻く
④③の巻きすを外し、ラップで両端も包み、電子レンジで6分加熱
⑤少し冷ましてラップを外す。包丁で一口大に切り、器に盛って練りがらしを添える

昭和村は、県内一のレタス産地。収穫作業は4月下旬から10月上旬まで続く。30年近く栽培する高橋宏幸さん(44)は、新鮮なレタスを届けるため、夜明け前から作業を開始。1日平均6000玉のレタスを県内や関東を中心に出荷している。
昭和村でレタス栽培が始まったのは、約40年前。父親から農家を継いだ高橋さんは、27歳で「高橋菜園」を法人化し、レタスを主軸に汗を流す日々を送る。

25年前、同村のレタスの作付面積が一気に拡大。品種や農薬の種類が増え、地域の育苗センターで苗を供給できる体制も整備された。苗を自動で植え付ける専用機械の登場も生産力向上を後押しした。
朝採りで鮮度保つ
高橋さんは30以上の畑、合わせて14ヘクタールで玉レタスを栽培している。収穫のトップシーズンは、春先の4月下旬から6月下旬と、秋口の9月中旬から10月上旬。出荷量は1日8トン、1万玉近くに上る。「20年前と比べ、10倍以上の出荷量」と成果を上げている。
畑全面に農業用マルチシートを敷いてから、苗が入ったトレーを専用機械にセットして植える。定植から収穫まで35~40日と期間が短い。そのため、作業を分担して毎日定植、収穫を繰り返す。雨で畑がぬかるみ、機械が入れないときは、従業員総出で苗を手植えする。
気温が高くなると葉がしおれるため、収穫作業は未明から始まる。暗く静寂に包まれた午前2時。投光器の光にレタス畑が浮かび上がる。両膝をつきながら一玉ずつ包丁で切り取り、専用コンテナに詰め込む。鮮度を保つため、日が昇る前が勝負だ。切り口が赤く変色するのを防ぐため、その場で洗浄し、すぐにトラックに積み込み発送する。

品種を使い分ける
栽培する品種は季節に応じ、寒さや暑さ、雨や干ばつに強い品種を使い分ける。さらに品種ごとに肥料の配合を変え、シャキシャキした食感、みずみずしくきれいな形にする。「経験だけでなく、蓄積したデータに基づき、どの品種もバランス良く栄養を取れるようにする」と高品質を目指している。
連作障害を避けるため、2年ごとに畑を地元のコンニャクイモ畑と入れ替えている。他の品目を手がける農家との連携も欠かせない。
高橋さんは、2018年に食の安全や環境保全に取り組む農家に与えられる「JGAP」の認証を取得。部会長を務める地元の久呂保(くろほ)レタス部会も昨年、同認証を受け、地域を挙げて安全安心な栽培を進めている。
同村のレタス農家の主力は40代。若手も就農し、活気がある。「計画的に生産し、安定出荷につなげるのが大きな目標。夢のある仕事にしたい」と将来を担う子どもたちが魅力を感じるよう、高橋さんの努力は続く。
県内の主なレタスの産地は昭和村、沼田市、長野原町。2020年の作付面積は1340ヘクタール、出荷量は5万2100トンで、いずれも長野県、茨城県に次ぐ全国3位。家庭ではリーフレタスが育てやすい。プランターに園芸用培土を入れ、種をまいたら乾燥しないよう濡れた新聞紙などで覆い暗くする。芽が出たら外し、水はやり過ぎない。葉を摘み食べるのがお勧め。