8月6日付の「視点」で、粂原圭太郎さんがスマートフォンの有用性と適切な距離感での付き合い方を紹介しており、興味深く読みました。工夫して対処できる大人に比べ、自己コントロール力の弱い子どもたちの生活はどうでしょうか。
2021年9月にデジタル庁が創設され、学校ではGIGAスクール構想に拍車がかかり全児童生徒にタブレット端末が配られました。パソコンやスマホ、インターネットが生活の中に浸透する一方で、使い過ぎによる生活リズムの乱れや誹謗(ひぼう)中傷、なりすまし、偽情報など、さまざまなネットトラブルも起こっています。トラブルに巻き込まれて困っている子どもや家族もいると思われます。
さまざまな問題の中でも気になるのが、ゲームやネットの使い過ぎによる「依存」です。横浜市の調査では、小学生の10人に1人はゲーム依存気味であるという結果が出ています。
最近のオンラインゲームは依存性が高く、ギャンブル性が強いと言われています。ゲーム依存の症状には睡眠障害や昼夜逆転、家庭内の暴言・暴力、ひきこもりなどが挙げられます。日常生活や健康、学業、交友関係にも影響が出て、睡眠障害となった時点で思考力が低下し、どんどん悪循環にはまっていくので、専門家は早めの予防が大切だと指摘しています。
家庭でもゲームをやめられない子どもに対して「約束を守れないならゲームを取り上げるよ!」「言う通りにしなさい!」など親の一方的な声が投げられているのではないでしょうか。一方的な押しつけは反発を呼び、家庭内で親子のバトルが勃発しているのではないかと気になります。
依存症専門医の分析する「ゲーム依存になりにくいタイプ」は、社会的能力や自己評価が高く学校が楽しいと感じられる子だそうです。つまり、子どもたちの社会性や自尊感情を育むことが予防につながると考えられます。
親子で利用のルールを設ける際には「なぜルールが必要なのか(社会性)」をきちんと伝え、子どもの権利条約の精神を取り入れて子どもの意見を受け止め(自尊感情)一緒にルールを考えること、スマホやゲームを渡す前に話し合うことがポイントになるようです。それぞれの家庭に合った独自のルールを話し合い、ゲームと上手に付き合ってほしいと思います。
ネット利用に関しては前橋市の「インターネット利用の約束」、高崎市の「高崎ルール」のように、各自治体において利用ルールを整備することも必要だと考えます。
ネットトラブルは起きてからの対応では解決が困難となることが多いです。「親子のための保健室」など、予防や対策について相談できるサイトもあります。必要に応じて活用しましょう。
【略歴】玉村町を中心に35年間、小中学校教員を務めた。2020年、同町を拠点に子ども支援団体「JOYクラブ」を設立。群馬子どもの権利委員会副代表。群馬大卒。
2022/08/27掲載