豪雨災害の頻発・激甚化により、治水対策の重要性が高まっている。2019年10月の台風19号では、本県を含む首都圏の広い範囲が大きな被害に見舞われた。国は流域圏を一体とした水害対策「流域治水」を打ち出し、取り組みを加速している。こうした中、熊本県では白紙となっていた川辺川ダムの建設計画が復活。県内でも19年前に中止された戸倉ダム(片品村)の建設再開を求める声が出ている。
「40年以上、消防団に携わってきたが、あれだけの雨量は初めて」。嬬恋消防団の熊川美朗団長(62)は19年の台風19号を振り返った。嬬恋村を流れる吾妻川が氾濫し、同川に架かる国道144号の鳴岩橋が崩落。家屋や道路への被害が相次いだ。県内は山間部を中心に土砂崩れが発生し、富岡、藤岡両市では計4人が犠牲になった。
当時、関東・東北地方を中心に国管理の7河川12カ所、県管理の128カ所で堤防が決壊した。群馬大大学院の清水義彦教授は「(専門の)河川工学の立場からもショッキングな出来事。利根川は中下流で計画高水位を超え、氾濫するぎりぎりだった。利根川の治水は首都圏の人命、経済など国家存続に関わる」とし、国の治水対策強化のきっかけになったと指摘する。
■ダムの効果
治水対策で効果が大きいとされるのがダムだ。台風19号で利根川氾濫に至らなかった背景には、当時試験湛水中だった八ツ場ダム(長野原町)が水位低下に一定の役割を果たしたとの見方は根強い。
国土交通省関東地方整備局は台風19号の際、八ツ場を含む七つのダムがなかったと仮定した場合、利根川の...